截金(きりかね)

まとわれた美しい輝き
人を魅了する、精緻な文様と気品ある光沢

仏像の荘厳性を高める截金。

金箔を張り合わせて細く切ったものを、仏様のまとっている衣類などに張り合わせていく古い技法です。現代は、仏像装飾だけでなく、工芸品や絵画にも用いられています。

歴史的には、ガラスに用いられたものが一番古く、紀元前2世紀頃エジプトのアレクサンドリアで作られたと考えられるガラス碗が現代にも残っています(大英博物館所蔵)。

日本には、飛鳥時代に仏教伝来とともに伝わったと言われ、平安・鎌倉時代に仏像の装飾に多用されました。その後、様々な素材に用いられながら截金は発展を遂げ、一時は衰退したものの、東西本願寺の庇護の下で截金師の家は存続してきました。

海外ではほとんど研究されていないという金箔装飾の技法。
日本でも幻の技法と言われ、截金作家は日本に現在わずか10人ほどです。

弊所では、江里佐代子氏(人間国宝)に指導を受けた日本画家、並木秀俊氏が截金を担当しております。

截金の魅力について、並木氏は次のように月刊美術で語りました。

「文様の普遍性、連続性、そしてまた金という素材が持つ永遠性に惹かれます。非常に繊細かつ途方も無い制作工程なので、無心でないとできない。(中略)かつての截金師は香木を口にくわえて、祈るように一本一本截金を施していたと伝えられています。それが仏門の修行だったのかは資料がないため不明ですが、近い精神性があるのかもしれませんね」(「今月のこの作家・この作品 並木秀俊(日本画家)」月刊美術No.418, p.110, 2010)

立体への截金は、平面の作品とはまた異なる技が求められるといいます。
並木氏はじめ、古典を学びかつ立体・平面を自在に行き来できる截金師は、数少ない截金作家の中でも貴重な存在となりました。