11/3(日・祝)高知城歴史博物館で仏像制作の実演・解説会を担当させていただきました。準備期間の5ヶ月も少し振り返りつつ、ご報告いたします。
初夏でしたか、渡部淳館長から「木からどのように仏像が生まれるのか?」というテーマで講演のご依頼がありました。
実演・講演会はこれまで経験があるものの、博物館のステージにちょうど良い寸法の制作物(仏?)がなくどうしようかと思案していると……仏様の周辺では不思議な流れがあるものですね。
タイミングよく僧形文殊菩薩坐像の発注があり、荒彫りを実演することが決まりました。
次の問題は、資料をどうまとめるかです。
・どのような人がいらっしゃるのかわからない
・半屋外で出入り自由な会場
・30分ほどの解説時間
この条件下で、制作のどこに焦点を当てれば良いか悩みました。
はじめは、仏像の構造や技術的な内容にしたのですが、開催日が近くにつれ「何かが足りない」と感じるように……
「仏像の素材の中で木はどういう位置付けにあるの?」
「木の種類は?選び方は?」
「彫刻家と仏師の違いは?」
といった技術の背景に触れずしては、弊所がやる意味がないと練り直すことにしました。
当日の渡部館長のお言葉から、そんな私たちの思いを少し感じていただけるかと思い、ご紹介します。
当館3階で「大名墓をめぐる世界そのすべて」という企画展が開催されております。「お墓」と一口にいっても、亡くなる人の健康から、お墓の造営、残された人の菩提を弔う遠忌、仏像や御位牌を御安置するということが行われます。
渡部淳館長「仏師の技術」開演挨拶 11/3(日・祝)高知城歴史博物館
それだけですと、歴史的にみるとどういう意味があるのかといった抽象的な話で終わるんですが、今回は、その御安置された仏像がどのようにこの世に現れてくるのか、という技術の世界を紹介しようというものです。
ただ、技術の世界といっても、パネル(資料)をご覧いただければお分りいただけると思いますが、仏様を彫り出すというのは、単に木を彫る技術だけでは済まないんですね。
発願から始まり、開眼供養で魂を入れる、そして御安置をするといった極めて精神的な世界であり、多くの人の思いが込められたものであります。
そういうことを前提にして、その中で仏師がどんな技術を使い、どんな思いを持って仏様を彫るのかといったことを今日は感じていただければと思います。
このパネルですが、準備に伺ってびっくり!
「とくとご覧あれ」と言わんばかりのサイズで、博物館前に堂々と並ぶ資料たち。
スタッフの皆様が、資料を大きく引き伸ばしてイーゼルで展示してくださっていました(本当にありがとうございます)。
とにかくこのパネルが目立って、通りかかった人がパネルに足を止める光景がよくみられました。
ご来場者の中には、2年前の個展以来再会を待ちわびてくださっていたという方、知人夫婦、SNSでつながりのある人、高校の同級生の顔もあり、温かい無言の応援をヒシヒシと感じました(新たなご縁もあってこれからが楽しみです)。
最後に、ご参加くださった方からの感想を紹介します。
参加者の感想
- 心に残る素晴らしい実演をありがとうございました。
- 人々の祈りを受け止める仏像をつくるということが、単に「技術」だけでなく精神的なものだということが分り、崇高なお仕事と感じました。
- 荒彫り中の削られた木片のいくつかを持ち帰り眺めています。
- ただの木から仏になる。いつから仏になるのか?何と表現すれば良いのか分かりませんが、芸術家とも違った形の、美の表現に触れた様な気がします。
写真の通り、ステージの上とはいえお客様と吉田の距離はとても近く、ご質問も多数いただきました。
こうした機会を通じて、これから仏像をご覧になる方の視点が一つ増えたり、お像の背景をより観じる手助けができたら本当に嬉しいです。
メインの企画展「大名墓をめぐる世界そのすべて」は、11月25日(月)まで。
形に込められた智恵と技、今も昔も変わらない人を思いやり悼む心、最新技術で迫る時空を超えた展示、どうぞお見逃しなく!
職人は二度来る
職人の技はまだ終わりません!
11月17日(日)、今度は石工の実演会(@高知城歴史博物館)があります。
公開制作『石工の技術』スケジュール
10:00~11:00
11:30~12:30
13:30~14:30 いずれも北ステージにて(参加費無料)
石材彫刻は木彫と共通点も多いそうですが、石ならではの技術が求められます。当日は特別な特典もあるようですよ^^
実演を担当される寺尾石材様が、弊所の実演会についてブログでご紹介くださっています。ありがとうございました。
日曜日は高知の城下へきてみいや〜♫