仏師と尼僧の物語

お線香

OKOPEOPLEで連載中の「ほりごこち」から、仏師が登場する物語「ながれながれて」をご紹介します。

 背筋の伸びた後ろ姿が、ぼんやりと恵葉の胸の内に現れた。

恵葉と呼ばれた尼僧は、奉公している寺院での御本尊の開眼供養会のため、この数ヶ月は文字通り走り回っていた。無事当日を迎え、やっとひと心地ついたところでつい居眠りをしていたらしい。

(あの御方はもう席につかれただろうか)

「ながれながれて(後編)」より

当初、編集部の方との打ち合わせでは、エッセイを書く予定になっていたのですが、どういうわけかスルスルと物語が生まれてしまいました。ちなみに、尼僧の名前は恵葉(けいしょう)と言います。

その経緯と後日談を、あとがき的エッセイ「白檀の香りと記憶の明滅」にも書かせていただいております。あわせてお読みいただけるととても嬉しいです。

土蔵の修復
小説公開後、偶然にもモチーフの一つとなった土蔵の修復が始まりました

アイキャッチの素敵なイラストは、田渕正敏さんが描き下ろしてくださいました(ありがとうございます!)。仏像が生まれる時に造佛所に残る木っ端のイメージから、切り絵・紙片を表現に取り込まれたとのこと。優しくて少し切ない印象が、「こぼれ落ちた物語」のイメージにぴったりです。

昨年2019年は、複数の媒体で執筆の機会をいただくご縁を賜りました。これも神仏のお計らいと思っております。拙いながら、造佛所だからこそお届けできることもあると信じ、今年も筆をとって参りたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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