現代造佛所私記 No.9「リズム」

(アイキャッチ撮影:田村紀子)

私たちの工房の活動を見て、混乱する人もいるんじゃないかと思う。

実際に「一体何をやっているのかよくわからない」と言われたこともある。

というのも、ブログやSNSには、仏像以外に、雅楽、弓道、茶道の投稿が並んでいるためだ。

広報戦略的には、何を提供している事業所なのかを分かりやすく見せたほうが良いだろうし、要素をもっと上手にみせる方法もあるはずだ。

私たちに、そこまでのスキルと余裕がないことを残念に思う。

とはいえ、どれも人生において欠かせない要素で、これが私たちの日常なのはたしかだ。

一つ一つが互いに影響しあっていて、今はどれもが不可分なものと感じている。

昨年、ある霊場の先達さんから、「雅楽や弓道は仏像製作に影響していますか?」と質問を受けた。

吉田仏師と意見が一致したのは、私たちにとってどの要素も通底していること。それが仏像にどう影響しているかというと、「リズム」ではないか?ということだった。

どれも、間合いや呼吸、所作の緩急は技に直結し、「舞」の要素がある。姿勢はもちろん、視線をどこにおくかも大切だ。私が担当するPR事業のプレスリリース作成やメディアアプローチだってそう。

ポンポンと所作を重ねることもあれば、時にはゆっくり粘るように、時にはあっさりと軽く、直線、波線、大きな弧を描いて、場や関係を作りあげていく。

仏像製作にも、それがある。

刃物と木が生み出すリズム、作り出される直線や波線、弧が織りなす造形。それらが響き合い呼応しあって醸し出されるたたずまい。

雅楽や弓道、茶道で培われる間合い、リズム、身体の感性はそのまま、吉田の体から仏像に投射されている。