私は、「承欣 SHOW-GON」という、神社仏閣や伝統文化に特化したPRサービスを提供している。
PR=Public Relationsといえば、メディア各社と渡り合う、花やかなイメージを持たれる人もいるだろう。けれど、他のPRプロデューサーたちも口を揃えるように、本当に地道なことの積み重ねだ。そして、各方面に心を配りながら、幾つもの橋をかけていくような仕事だ。
発信には必ず下ごしらえがあり、最初はヒアリングして、PRの設計書・戦略を練る。まだ言葉になっていない価値をPR視点で言葉として切り出す。それを、社会の文脈の無数の枝の中から一本を選んで結びつけたり、他の要素と掛け合わせたり、さらに分解して再構築してみたり。
A4一枚のプレスリリースを書くのにも、たくさんの情報を集めてくる。 図書館に行くこともある。記者クラブの棚からメディアの担当者さんが膨大な量のプレスリリースの束の中から、その一枚を見たほんの僅かな一瞬で、「これは取材に行きたい」と思っていただけるような、濃さ、切り口が求められる。まだまだ迷うこともあり、直前まで推敲を続けている。
最近ご相談が増えているのは、チラシ監修に並んでプレスリリースの添削。
チラシは、PR視点を付加してプロフィールをまとめ直したり、情報の交通整理をしたり、ガラッとイメージ刷新することもある。
プレスリリースでは、メディア側で受け取りやすい形式・内容にブラッシュアップする。そうすると、いつもは1社くるかどうかというプレスリリースへの反応が、三倍以上になったりする。
これらは、比較的安価でPRの力を感じられる、人気メニューとなっている。
その他、承欣ならではの特徴は、仏像工房での経験がPRに溶け込んでいることだ。
文化財に関する知見は基本として、「あと一手間」の姿勢で、資料作成、イベント時の備品選定など、現場感覚のある提案力として活かされている。
たとえば、神社仏閣でイベントをした際に実施するアンケートでは、文化財保存の文脈からご用意いただく筆記用具までアドバイスすることがある。
また、たとえ魅力的な伝承があっても、裏付けがない限りは情報を慎重に扱う。それがメディアフックとして効果的な情報であっても、専門家による調査や客観的資料がない場合には、あえて言及しないこともある。後に新たな事実がわかることもあるし、過度な演出が思わぬ弊害を生むこともあるからだ。
一時の注目よりも、未来に残したい本質的な価値を常に問う——これは、文化財の保存現場で身につけた価値観だ。
時に、PRを依頼したら「あ、これで煩わしさから解放される」と感じる方もいるかもしれない。 でも、やりとりを重ねる中で、別な大変さが生じることは覚悟していただきたい。
PRを積み重ねていく中で、新しいアイデアが生まれて企画を立ち上げたり、報道へのさまざまな反応を受け、主催者がPRの可能性を感じて別な発信への取り組みを始めたり。結果として、当初よりプラン内容が増えることも少なくない。依頼主とのやりとりも密になる。
インターネットという大河で大量の情報が流れ過ぎていく。そんな中、SNSのタイムラインで、皆どんな基準でリアクションしているのだろう。
私自身は、割と気軽にリアクションする方だ。何かいい瞬間をもらったなと感じた時に、タップすることが多い。
だからこそ、投稿をつくるときは、こちらが伝えたいことを書き連ねるだけではなく、 インターネットの世界に、ちょっとしたギフトを言葉にのせて放てられたらと願っている。
最近、ある催しを終えた後、主催の方から突然お電話をいただいた。チャットでほとんどが完結するご時勢だが、「一言お伝えししたくて」とご連絡くださったのだ。
「伝えることの力を、改めて感じました」と言ってくださった。
SNSの投稿を見て、新しいお申し込みがあったことも教えて下さった。
「伝えることの力」
その言葉が、胸に残った。