現代造佛所私記 No.566「ハチドリとキツツキ(前編)」

「そちら、フェアトレードのブローチです。自然素材を使っていて……」

この時期になると、毎年のように訪れる、私たち夫婦お気に入りのカフェがある。

骨董の器や作家物の焼き物、そして世界中の手仕事が、ほどよい余白を残して並べられている。

国道や高速道路にも近い立地でありながら、庭を望む和室は、森の中かと思うほど静かである。

この日は幸運なことに、ほかに客がなく、私たち二人だけだった。

ケーキセットをいただきながら、庭を眺める。

なぜか、ここのコーヒーだけは、カフェインが苦手な私たちの身体も素直に受け入れてくれる。甘さを控えたケーキと、香りのよいコーヒーをいただきながら、取り留めのない話をした。

高知へ移住してきた十年前のこと。
その頃にお世話になったカフェギャラリーの思い出。
これからの製作のこと。

心地よくリズミカルなししおどしからこぼれる雫の音に誘われ、あちらこちらへと話題が枝分かれしていく。

「そろそろ出ようか」

存分に喋って、舌も満たされ、和室から土間へ降りた。

かつて呉服屋だったというこの建物には、今は店主こだわりの生活雑貨が、明るく、品よく、そして楽しげに並んでいる。

「欲しいものない? プレゼントするよ」

夫が言った。

この日は、私の誕生日のお祝いだった。

すでに私の目をとらえていたものがあった。とろりとした卵色の照明を受けて、控えめに光る小さなアクセサリー。

「これ、可愛い」

鏡の前で胸元に当ててみた。

手刺繍で作られた、自然素材とビーズのバードブローチ。ハチドリとキツツキだった。

どちらも、それぞれに可愛らしく、選べない。

というより、どうしても二羽でないといけないような気がした。

それでも、どちらか一羽を選ぼうと逡巡していると、夫がさっと言った。

「両方買えば?」

今日は、甘えることにした。(続く)