「そちら、フェアトレードのブローチです。自然素材を使っていて……」
この時期になると、毎年のように訪れる、私たち夫婦お気に入りのカフェがある。
骨董の器や作家物の焼き物、そして世界中の手仕事が、ほどよい余白を残して並べられている。
国道や高速道路にも近い立地でありながら、庭を望む和室は、森の中かと思うほど静かである。
この日は幸運なことに、ほかに客がなく、私たち二人だけだった。
ケーキセットをいただきながら、庭を眺める。
なぜか、ここのコーヒーだけは、カフェインが苦手な私たちの身体も素直に受け入れてくれる。甘さを控えたケーキと、香りのよいコーヒーをいただきながら、取り留めのない話をした。
高知へ移住してきた十年前のこと。
その頃にお世話になったカフェギャラリーの思い出。
これからの製作のこと。
心地よくリズミカルなししおどしからこぼれる雫の音に誘われ、あちらこちらへと話題が枝分かれしていく。
「そろそろ出ようか」
存分に喋って、舌も満たされ、和室から土間へ降りた。
かつて呉服屋だったというこの建物には、今は店主こだわりの生活雑貨が、明るく、品よく、そして楽しげに並んでいる。
「欲しいものない? プレゼントするよ」
夫が言った。
この日は、私の誕生日のお祝いだった。
すでに私の目をとらえていたものがあった。とろりとした卵色の照明を受けて、控えめに光る小さなアクセサリー。
「これ、可愛い」
鏡の前で胸元に当ててみた。
手刺繍で作られた、自然素材とビーズのバードブローチ。ハチドリとキツツキだった。
どちらも、それぞれに可愛らしく、選べない。
というより、どうしても二羽でないといけないような気がした。
それでも、どちらか一羽を選ぼうと逡巡していると、夫がさっと言った。
「両方買えば?」
今日は、甘えることにした。(続く)


