現代造佛所私記 No.558「実りの秋(前編)」

「今移動中ですか?」

お世話になっている和尚さんから一本の電話。出先だったが、「戻りましたら伺います」と電話を切った。

「お寺のブルーベリーがたくさんなったから、取りにおいで」というお誘いだった。

収穫する第一陣、第二陣が終わり、吉田家のために木二つ分の実を残してくださっているという。

大きめの容れ物を持ってきてくださいとおっしゃるので、大きめのタッパーでいいでしょうかというと、うーん…と濁されたので、とりあえず大きめの鍋を持っていきます!と答えた。

娘が帰宅して着替えさせ、家族三人で山のお寺に向かった。虫除けをふり、いざお寺の境内に入る。

ご住職の姿が見えない。「こんにちはー!」とひろい畑と野山に向かって挨拶すると、畑の柵とネットの緑の向こうから「はーい、こんにちは」と帰ってきた。

黄色いTシャツに作業ズボン姿のご住職が、朗らかな顔で出迎えてくださった。

「すぐ何キロ、というくらいに取れるんでこれ使ってください」

と、カラフルなプラスティック製の箕(み)を三つ貸してくださった。

ブルーベリー畑に案内され、家族三人目を見開いた。たわわに実ったブルーベリーがあたりを青色に染めていた。

「すごい、これ、いただいていいんですか」

実の重みで垂れた枝に触れようとすると、ご住職が笑いながらおっしゃった。

「それ、もう実をとった後の木です」

熟した実だけを振り落とし、それでもまだたわわになった枝。私たちに残してくださった木は奥の方にあった。

「こうやって、ひと枝ごとに振ると自然に落ちるので、それをカゴで受けるといい。落ちたらもう拾うの大変やから、無理に取ろうとせず、こうやって———

バラバラバラっと、ブルーベリーの実が転がった。

「美味しい!!」娘はすでに夢中で実を口に運んでいた。

手本通りに枝を振るだけで、あっという間に、箕三つ分にずっしりブルーベリーが収穫できた。