「見て、これどう?」
剪定ばさみを片手に裏庭へ出ていった夫が、両手に白い花をこんもり抱えて帰ってきた。
神棚用のお榊を取りに行ったついでに、前から気になっていた花を摘んできたらしい。なお、この辺りの山菜や花をいただくことについては、地区の許可をいただいている。
どうしたの?と聞くと、「綺麗だったから」という。
「花瓶あるかな」花を抱えたまま、夫が目線を泳がせる。小ぶりな花瓶をいくつか取り出して水を入れると、夫は剪定ばさみで長すぎる茎を整え始めた。
「斜めに切って」私も口を出す。そして、どうしたの?と、もう一度聞いてしまった。
「え、綺麗じゃない?」夫は、花を花瓶に挿しながら答える。「まだ長いかな」再び茎を切ろうとするので、「あ、これくらいで切って。こっちの花は、ちょっと高さを出したい」また私が口を出す。
「うーん、外で見たときは綺麗だなと思ったんだけど……」夫はそう言って口を結んだ。
——が、花瓶にいけ終わると、「やっぱり綺麗だね!」と顔を上げた。
うん。素敵。綺麗だね、と私も答える。実際、可愛らしくて、見ていると心が和む。
山に暮らして、四季折々咲く花を愛でてはいるけれど、夫が一人で花を摘んでくるなんて、初めてのことだった。
私に、と摘んできてくれたとも言わない。だけど私は、花束をプレゼントしてもらったような気持ちになって、ひそかに喜んだ。
いつも家のそばで見かける、その白い花の名前を、私はまだ知らなかった。
その花の名は、ノリウツギという。
朝の、夫婦のなんでもないやりとりである。
書くに足らないほどの、小さな日常の一コマ。だけど、ここは造佛所の私的な記録だから、こういうことも残しておこうと思う。
ノリウツギ。またひとつ、花の名を知った。


