現代造佛所私記 No.550「ノーベル賞とチョコ(6) 」

「日本には、どの分野にも研究者がいる。それが日本の素晴らしいところ」

ノーベル化学賞受賞の祝賀会 in Kochi(於:城西館)の壇上で、北川進先生がおっしゃった。

昨年の受賞以来、多忙を極められ、最近は大きな会合は控えていらっしゃるそうだが、今回はありがたいことに高知に4日間もご滞在された。

きっとお疲れも出ていらしたのではないかと思う。しかし、そんなことは微塵も感じさせない張りのあるお声で、祝賀会に集まった170名ほどを前に語られた。

人口のもっと少ない国では、研究者がいない分野もあり、海外まで探しに行かなければならない。しかし、日本には一通りの分野に研究者がいるのだという。

なんとなく肌で感じていたことではあったが、こうして改めて聞くと、それは本当に稀有なことであり、日本の素晴らしい美点なのだと思った。

学術を取り巻く環境について、心配になるような話を耳にすることもある。

それでも、日本語に訳された世界中の専門書を読むことができる。そして、小さな町にも図書館がある。この幸運も、決して当たり前のことではないのだろうと噛み締めるような思いで聴いていた。

そんな環境を次の世代にもつないでいかねばならないと、小さな工房を営む身ながら、背筋を伸ばされるような思いがした。

「お子さん、ぜひ(自由に研究を)続けさせてあげてください」

北川先生と個別にお話しした際、前日に自由研究の発表をした娘に、メッセージをくださった。

帰宅後、その言葉を娘に伝えると、

「……えへへ、嬉しい」

と、少し照れた笑顔を見せた。

娘が先生から手渡されたノーベル博物館のチョコが一枚。

そして、祝賀会でいただいた、もう一枚。

我が家の冷蔵庫には、忘れられない二日間が夢でなかった証拠として、北川先生のサイン入りメダル型のチョコが二枚、大事に保管されている。

娘がどう思っているのかは、わからない。

でも、探求する面白さや、何かを発見したときの興奮を、これからも存分に味わってほしいと思う。

いつかまた、北川先生とお会いできたなら、この夏のことをお話しできたらと思う。