現代造佛所私記 No.548「ノーベル賞とチョコ(4) 無用の用 前編」

「湯川秀樹は知ってた!」

先日の北川進先生のご講演で、10歳の娘が理解できたことは、もちろん部分的である。

けれど、湯川秀樹博士の名前には、大きく反応していた。

娘の小学校には、日本で最初に建立された湯川秀樹博士の胸像があり、当時博士ご夫妻が除幕式にご来高されたほか、記念事業が今でも欠かさず続けられている。身近なところに、その名前があったのだ。

北川先生のお話の中で、湯川秀樹博士が読み解いた「天才論」として紹介されたのが、「無用さ(Redundancy)こそが独創性を育む」という考え方だった。

そして、私が講演中、メモを取る手が止まらなかったものの一つが、「科学的ブレイクスルーを導く三つの概念」である。

  1. 集合(Assembly)
  2. 空間(Space)
  3. 動性(Dynamicity)

「無用さ(Redundancy)」は、その二つ目、「空間(Space)」のところで語られた。

既成の枠の中で器用に振る舞うだけでは、独創的なものは生まれない。

一見すると無用に見える余剰、つまりRedundancyを持たないものには、既存の枠を超える想像力は生まれない。

そんなお話だった。

無用の用。

役に立たないと思われているものの中には、思いがけない可能性が眠っている。

何もない空間には、まだ形になっていないものが、いくらでも入り込める。

北川先生は、言葉を変えながら、そんな「空間」の持つ無限の可能性について語られていた。

科学的なブレイクスルーに限らず、きっといろいろな場面に当てはまると思う。(続く)