現代造佛所私記 No.547「ノーベル賞とチョコ(3)」

今回、北川先生のお話を伺いながら、私たちの紆余曲折も、かけがえのない財産なのだと、温かな言葉をかけていただいたような気がした。

そして、もう一つ。

「敵は常識なんです。」

こちらも北川先生のお言葉である。

当工房の場合、事業として見れば、いわば「常識的に考えれば無理」と思われるような環境とリソースの中でやっていくしかなかった。

だからこそ、その制約の中からアイデアをひねり出し、薄い紙を一枚ずつ重ねていくように、小さな工夫を積み重ねてきた。

「そんなことやってる場合か」と、常識的な人なら言うだろうなと思いながら、お茶や雅楽、弓道の稽古をせずにはいられない自分たちを、少し離れたところから眺めることもあった。

でも、そこから思っても見ないような、多くの得難いご縁が広がった。

そして、気がつけば、工房も十年目を迎えることができた。

コロナ禍をきっかけに工房の柱の一つとなったPRも、考えてみれば同じである。

「こういうものだ」と決められた枠の外側にあるものを拾い上げ、まだ当たり前になっていないことを、少しずつ当たり前にしていく。

それはまさにPRの営為でもある。

それは、社会の「こうであるべき」を、より良い方向へ書き換えていく仕事でもあるのだと思う。

御仏の教えを北極星として。

目の前の常識にとらわれすぎず、けれど奇をてらうこともなく、柔軟に。

結果を急がず、一つひとつ積み重ねていこうと改めて思う。

そんなふうに、これからの道を進んでいく勇気をいただいた。