「お話を作るのが難しかったら、好きなお話を漫画にしてみるのもいいよ」
そう言うと、娘は本棚からいくつか絵本を取り出した。しばらくすると、小さな一冊を胸に抱いて居間に戻ってきた。
「浦島太郎にする!」
プリンタのトレーからコピー用紙を拝借し、いつものようにフリーハンドでコマを描き始めた。
漫画を描くならと、コマ割りの仕方をざっと説明し、私も定規を持ち出し実際に描いてみせる。
「わ! ほんとに漫画みたい! 描く描く! 描かせて!」
目を見開いた娘が、私から紙を奪うように前へ乗り出してきた。
下書きができたところで、今度はペン入れ教室である。
娘愛用のガラスペンと墨汁を使う。
「わぁ! すごい!!」
乾いたところで消しゴムをかけると、鉛筆の線がきれいに消えて、墨の線だけが残った。
また娘の目が輝いた。
ところが。
2ページ目の一コマを描いたところで、ぴたりと手が止まった。
「あぁ、楽しかった」
そして、
「私は、漫画家はいいや! コマ描くの無理だ。読むのがいい!」
漫画家への夢は、あっという間に散った。
けれど、楽しく夢を手放す娘の屈託のなさが、なんとも清々しかった。
やってみて面白かったけど、自分には向いてなさそうと感じた、それも娘のこの夏の尊い経験だ。
りぼんっ娘、そして岡田あーみん先生のファンである母としては、「お父さんは心配症」にいつ娘が目覚めるのか、そちらのほうを楽しみに見守りたい。


