もうひとつは、昨日のこと。
実家でお盆の支度もめどがつき、家族揃ってお墓へご先祖さまをお迎えに行く前のひと時だった。
娘が夏休みの宿題で、祖父母に取材をしていた。娘がメモを取る後ろで、私も念のためパソコンに会話を記録していた。
話題は、祖父母が暮らしてきた土地のこと。
昔の田んぼのこと。
そして、そこに暮らしていたご先祖さまや、動物たちのことだった。
父も、孫娘に尋ねられるのが嬉しいらしく、どんどん話題が広がっていく。
さて、もうそろそろ最後の質問だ、というところで、私は目を見開いた。
突然、入力した文字が、ダーッと消え始めたのだ。
ファイルが突然終了したりするのではなく、誰かがdeleteボタンを押し続けているかのように、一文字ずつ、サーッと消えていく。
「えっ? わっ、止まらない。どうしよう」
もともとキーボードの調子が悪かったので、接触不良と考えても差し支えない。だけど、そのような挙動は後にも先にも初めてだった。
半分ほど消えたところでdeleteは止まり、娘のメモをもとに、もう一度打ち直した。その後、同じことは起こらなかった。
家族揃ってご先祖さまをお迎えに行く、まさにその直前。
「そんなことはいいから、早く迎えにきてよ」
そんな何かの悪戯だったのではないかと思うような、あまりにも出来すぎたタイミングだった。
もしくは、
「娘がしっかりメモを取っているんだから、心配しなくていいよ」
ということだったのかもしれない。
実際、その通りだった。
昔から、ちょっとした「奇妙なこと」がちょくちょくあって、身近な家族や友人にしか話していないことが、結構ある。
今日は、「このコラムを読んでくださる奇特なあなたには、お話ししてみてもよいかもしれない」ふとそう思って、調子の悪いキーボードを叩いてみた。
不思議だ。
調子が悪いはずの、tやi、yが、今日は素直に応答してくれる。
お盆のころの不思議。

