現代造佛所私記 No.531「お盆の頃の不思議(前編)」

毎年7月に入ると、お盆の気配が少しずつ濃くなってくる。

今年はいったい8月にはどれほどの暑さになるのだろうと、震えるほどの暑さだった。暑さに耐える中、いつの間にか子どもの夏休みが始まり、同時に「いつ帰省するのか」と、故郷から連絡が入り始める。

お盆の始まり。その時期になると、普段なら起こらないような、妙なことが起こることがある。

偶然であり、因果であり、何かとの応答であり。

それを解釈するでもなく、断定するでもなく、心に引っかかる出来事としておりにふれ温めている。

今年の夏も、二つ三つほど妙なことが起こっている。

ひとつは、朝のコーヒー休憩の時だった。

いつものようにカフェインレスコーヒーを淹れようと、台所でカップやドリッパーを鼻歌まじりに並べていた。

コーヒーを淹れるのにぴったりの、細口のステンレスポットを火にかけ、湯を沸かす。

いつものようにコーヒー豆を蒸らし、立ちのぼる香りを思い切り吸い込んだりして、味わいの予感に胸を膨らませていた。

ところが、徐々に濾過されていくコーヒーの粉の中から、ロープのような形が浮かび上がった。

「……? 麻紐がどこからか紛れた?」

そこにあるはずのない形に目を凝らす。

よく見ると、ムカデだった。

ポットの中に入り込んでいたのだろう。

すまないことをしたと思い、ムカデをお経とともに弔った。

美味しそうな香りのコーヒーだったが、断念し、お茶を淹れ直した。

コーヒーの中から現れたムカデにギョッとしたのは確かだが、最初に思ったのは、危険を避けられたことへの安堵と感謝だった。

いつもなら、ポットの中を確認してから湯を沸かすのに、この日はうっかりしていた。

用心して、手順を省かない。

その戒めをいただいたのだと、ありがたく思ったことだった。(後編へ続く)