現代造佛所私記 No.508「一蓮托生(4)」

「こっちはまだマシやねぇ!」

隣の広い畑を一人で世話する知人が、軽トラックの脇で汗をぬぐいながら笑った。海抜三百メートルのこの辺りでも息苦しくなるほどの暑さだが、海辺の町はそれ以上に堪えるらしい。

日焼け止めを手早く顔に塗り、また畑へ向かう。その逞しい背中が、今日はいつも以上に眩しく見えた。

私たちは今日、カブトムシの幼虫を葬った。

四月の終わり、あの知人の畑の脇に、ころんと白い大きな幼虫が転がっていた。道端をもぞもぞと這い出しているのを見つけた夫は、「このままでは鳥にやられてしまう」と、手に乗せて大事に連れ帰ってきた。

ちょうど空いていた植木鉢に腐葉土を入れて保護すると、どうやら蛹になる時期だったらしい。後日、虫籠と専用の腐葉土を用意すると、そこを気に入ったようで落ち着き、やがて蛹室を作った。

娘は名前まで付けて、見守っていた。家族みんなで、立派なカブトムシになる日を楽しみに待っていたのである。

ところが、ここ数日、どうも様子がおかしかった。

乳白色だった体が日に日にくすみ、艶を失っていく。

もう息絶えているのではないか。

いや、まだ望みはあるかもしれない。

夫と何度も調べ、迷った末に、傷つけないよう蛹室から取り出してみた。

その子は、幼虫の姿のまま息絶えていた。

「蛹になれんかったか。」

夫がぽつりとつぶやいた。

「やっぱり寂しいね。」

家の脇の畑跡にその子を葬り、黙って虫籠を洗う夫の背中を見ながら、私もついつぶやいた。

出会いと別れは、一対である。

ほんの数か月だったけれど、あの子は確かに私たちの家族として共に生きてくれた。

またどこかで、命と命として巡り会えるだろうか。

一蓮托生。