現代造佛所私記 No.504「御安置の後も続く仏像と人の物語」

仏像を発願されたお客様に、御安置後に連絡を取ることがある。

その後のお像の状態をお伺いすることもあれば、講演会などで事例としてご紹介したい際に、ご相談することもある。

それぞれの場で大切に拝まれている仏像のお姿を第三者に公開することについては、施主様のお考えやご事情もさまざまだ。公開を望まれない場合には、もちろん公にすることはない。

ありがたいことに、多くの施主様が「どうぞどうぞ」と快くお返事くださる。それでも、念のために事前に一声おかけするようにしている。

その時、お元気なお声を聞けると、心底嬉しい。

「毎日般若心経をお唱えしています。みんな元気にしていますよ。」

「公開されたら、ぜひ教えてください。」

「それは嬉しいお話ですね。」

受話器越しの溌剌としたお声や、メールに綴られた温かな言葉に触れるたび、「あぁ、よかった」と胸をなで下ろす。

以前は、仏像をお納めするところまでが私たちの仕事だと思っていた。

けれど工房も十年目を迎え、吉田仏師が十年以上前にお納めしたお仏像から、ごく最近お納めしたお像まで、折に触れて施主様とやり取りを重ねるようになった。

その年月の中で、ご家族が増えた方もいれば、ご病気と共に生きる人もいる。大切な人との別れを経験された方もおられる。

誰ひとりとして、平坦な人生ではない。

それでも、仏像をご縁に結ばれたことで、お互いの歩みを喜び合える関係が続いていることを、私はありがたく思う。

先方は、私たちのことをどのように思ってくださっているのか分からない。

けれど私にとっては、お納めした仏像が今日も変わらずその場所で拝まれ、その前で施主様が日々を重ねておられることを知るだけで、嬉しさが込み上げるのだ。

仏像は、御安置された日から新たな時間を歩み始める。

工房で仏像が生まれるまでをプロローグとしたら、ご安置後は「仏像と人の物語」の本編だ。今のこの瞬間にも、どこかで物語が紡がれている気配を感じている。