市内の公民館から、「仏像と人の物語」の講演依頼をいただき、梅雨明けの朝に車を走らせた。
この講演も、おかげさまで八回目になった。振り返れば、五百人ほどの方々と「仏像と人の物語」を分かち合ってきたことになる。
笑いあり、涙ありの90分。地元ということもあり、私も土佐弁混じりになって雑談も交えながら楽しく終えた。
さすが地元。すでにテレビや新聞などで工房のことをご覧になった方も、いつもより多かった。
「感想ではないんですけど…」
講演後の質疑応答の時間に、最後列の女性がマイクを持たれた。
スライドにも出てきた不動三尊を、実際に拝観されたことがあるという。「なぜか、その時一目見て涙が止まらなかったんです。」
二度目はそういうことはなく、とにかく一度目は、理由もわからない涙が止まらなかったのだそうだ。
私も、何年も前のこと、無数におわした観音様を前に、意識が吹っ飛んだことがあった。それはまるで心の隅々まで爽やかな風に吹かれ、あらゆる雑念が吹き飛ばされたような感覚で、あれが私の仏像との邂逅だった。
吉田仏師は、14歳の時。父親の友人が作った手彫りのお釈迦様を見た時に、理由もわからず「これだ」と思った。それ以来ずっと仏像を作り続けている。
「仏様と出会うと、不思議なことがありますよね」
私のその言葉にうなづいてくださる参加者たちが、風に揺れる花々のようで、なんだか心和んだ。
「仏像と人の物語」に、また一つ小さなエピソードが加わった。

