現代造佛所私記 No.50「宣伝美術とPR (後編)」

18歳の頃から3年間、宣伝美術として無我夢中で、時には徹夜もいとわなかったあの時代から、ずいぶんと時間が経った。

試行錯誤しながら作った劇団の公演チラシたち。一緒にファイルに大切に綴じていた版下も、引越しを重ねるうちにどこかへ消えてしまった。

今になって突如として、学生時代の1ページだった「チラシを介して誰かの心に届ける挑戦」、その続きが始まった。

現在、PRプロデューサーとして、私はまたチラシに関わるようになった。工房の催しに、お客さまの企画に。

「PR(Pubulic Relations)=良好な関係を築くために行う活動」の一環として、あの頃よりずっと深く関わるかたちで、あの頃と同じかそれ以上の情熱で。

相変わらずデザインは勉強したわけではないのだが、学生時代と製作環境で大きく異なっているのは、Macでグラフィックソフトを使っていること、便利なデザインツールがたくさん開発された世の中になったことだ。

Canvaなどの登場で、プロには及ばずとも、初心者でもある程度かたちにしやすい時代になった。

私はそこに、PRプロデューサーの視点で全体のディレクションを行っている。この点は、劇団の宣伝美術時代になかった大きな変化だ。

ご依頼くださった方のイメージやキーワード、そしてこちらで作成したPR設計をベースに、真っ白な画面のなかに、世界を作り上げていく。

本番当日にそこに現れるであろう気配に耳をすませ、作り手たちの熱を受けてどんどんレイヤーを重ねていく。そうして、平面にいろんな仕掛けを仕込むのは、本当に面白い。

心惹かれるチラシには、たくさんの物語や空気感、季節感が、文字や記号、写真、余白に閉じ込められている。

たった一枚の薄い紙が、新たな世界へ通じる窓や扉になる。そんな一枚に、私は今、PRプロデューサーとして挑戦しているのだと思う。

情報を整えるだけ、デザインが洗練されているだけでは足りない。「行きたくなる」「会いたくなる」「見てみたい」と思わせる、確かな力を宿した一枚でなければ。

逆に言えば、デザインに多少粗があっても、人の心を動かすならば、そのチラシは成功している。

あの日、拙いながら「何か」が現れたチラシに、演劇雑誌のライターが目を留め、芝居を観にきてくれたように——

実は、プレスリリースと通じるところがある。A4用紙1枚に、取材に行きたいと感じさせる要素を散りばめ、取捨選択し、構成し、練り上げる。

チラシでも、プレスリリースでも、思わず足を運んでみたくなるような、そんな一枚をと夢見ながら、今日も言葉と構図と余白の平原を歩いている。

※アイキャッチ画像は、あるお寺の小冊子に掲載されているイラストの一部。貴重な経験をさせていただいた。