もうすぐ七月七日を迎える。
私の中では、それは旧暦の七夕への入り口でもある。
旧暦の七夕に向けて節句の支度を始めるのだが、雨続きの数日笹をとりに行けないでいた。
何年か前までは、笹の準備と共に、硯や筆を用意していた。節句の朝は、畑の芋の葉から朝露を集めたものだった。子猫たちが戯れてきて朝露が散り、難儀したのも今は良い思い出だ。
その朝露は、墨をするのに使うのだ。家族みんなで筆を執り、短冊に願いを書いた。猫たちも肉球で印を添えた。
あの時の願いは、いくつか叶ったものもあるし、何を書いたかも忘れたものもある。
畑を手入れする時間もなくなった。獣よけの柵を外し、獣たちの庭になってからは、毎年育っていた芋も姿を消してしまった。
猫たちも一匹ずつ減り、少し寂しくはあるが、時は待ってくれない。今年の笹をどうするかだ。
「今日取りに行きたかったけど、雨だね。いつとりに行こうかなぁ」
朝食を終えてつぶやくと、夫が顔を上げた。
「いつ行くつもりだったの?」
本当は今日行きたかったのだが、予定が立て込んでしまった上に、雨模様。どうしようかと思って——と話すと、夫が長靴に履き替え始めた。
「とってくるよ」
雨脚がやや落ち着いた頃合いを見計らって、作業場のそばの竹藪に向かった。
しばらくすると、サラサラという葉ずれの音とともに、窓の外を緑を携えた人影が横切った。
「とってきたよ」
家族3人にはちょうど良い分量の笹。
「わぁ〜いいね!ありがとう」
シーズンごとのしつらいの物品をまとめたコンテナから、短冊のストックや水引を出し、支度を進める。
西暦と旧暦のグラデーションの中で、生活の折り目を清め、季節を寿ぐ。
そんなめぐりの中で、たくさんの思い出が手のひらにすくった砂のように、サラサラと指のあいだからこぼれていく。
サラサラ、笹の葉の清らかな音とともに。

