「お母ちゃん、これって何語?」
娘が就学前から何度も見続けているアニメ『銀河鉄道の夜』。今日も、何十回目かの視聴をしていた。家族皆が愛しているアニメの一つで、娘は音楽も気に入り、ピアノでテーマを真似て弾いたりしている。
食事の支度をしたり、洗濯をしたり、パタパタとする私を呼び止め、画面を指して見せた。
「あぁ、多分エスペラント語じゃないかな。」
「エスペラ……?」
「世界共通語として作られた言葉だよ。宮澤賢治も学んでいたんだって」
不思議そうに口元を尖らせ、何か考え込んでいる。
「ふぅん…」
調べてみたら?とスマートフォンを渡すと、スイスイと文字入力して検索し始めた。
「——こっか…かん?——…ふきゅうしなかったゆえに…?…——いくつもあったがのこったのは、エスペラント語だけだった…」
読み慣れない漢字につまづきながらも読み終えるとこういった。
「世界中の人が仲良くするために作られた言葉ってことかな」
アニメを一時停止して、画面に映る初めて見る言語を、一字一字メモ帳に書き写していく。
「ローマ字と似てるけど違うね。読めないや。プリ?アプド?あ、APUDとVINは2回出てくるね!」
pli apud apud vin eĉ vi levos ĉio nur ti vin do
書き写したメモを見せてくれた。
意味が分からないままメモを眺め、繰り返し出てくる文字を見つけたときの声は、発見の明るさを帯びていた。
翻訳機で調べてもよくわからなかったけれど、娘は気にせず再生ボタンを押して、画面のキャラクターを模写し始めた。
しばらくすると、娘がハッと顔を上げた。
「今、讃美歌って言った!讃美歌だよ」
——なるほど!讃美歌かぁ!Yちゃんは”讃美歌”って知ってる?
首を振る娘に、クリスマスの有名な曲を歌ってみせると、目を見開いて「あぁ!神様やイエス・キリストを賛美するから讃美歌かぁ!」と得心した、と言う顔をした。
夕飯前の、娘との時間だった。


