現代造佛所私記 No.480「10歳、エスペラント語と出会う」

「お母ちゃん、これって何語?」

娘が就学前から何度も見続けているアニメ『銀河鉄道の夜』。今日も、何十回目かの視聴をしていた。家族皆が愛しているアニメの一つで、娘は音楽も気に入り、ピアノでテーマを真似て弾いたりしている。

食事の支度をしたり、洗濯をしたり、パタパタとする私を呼び止め、画面を指して見せた。

「あぁ、多分エスペラント語じゃないかな。」

「エスペラ……?」

「世界共通語として作られた言葉だよ。宮澤賢治も学んでいたんだって」

不思議そうに口元を尖らせ、何か考え込んでいる。

「ふぅん…」

調べてみたら?とスマートフォンを渡すと、スイスイと文字入力して検索し始めた。

「——こっか…かん?——…ふきゅうしなかったゆえに…?…——いくつもあったがのこったのは、エスペラント語だけだった…」

読み慣れない漢字につまづきながらも読み終えるとこういった。

「世界中の人が仲良くするために作られた言葉ってことかな」

アニメを一時停止して、画面に映る初めて見る言語を、一字一字メモ帳に書き写していく。

「ローマ字と似てるけど違うね。読めないや。プリ?アプド?あ、APUDとVINは2回出てくるね!」

pli apud apud vin eĉ vi levos ĉio nur ti vin do

書き写したメモを見せてくれた。

意味が分からないままメモを眺め、繰り返し出てくる文字を見つけたときの声は、発見の明るさを帯びていた。

翻訳機で調べてもよくわからなかったけれど、娘は気にせず再生ボタンを押して、画面のキャラクターを模写し始めた。

しばらくすると、娘がハッと顔を上げた。

「今、讃美歌って言った!讃美歌だよ」

——なるほど!讃美歌かぁ!Yちゃんは”讃美歌”って知ってる?

首を振る娘に、クリスマスの有名な曲を歌ってみせると、目を見開いて「あぁ!神様やイエス・キリストを賛美するから讃美歌かぁ!」と得心した、と言う顔をした。

夕飯前の、娘との時間だった。