夕暮れの中、帰宅を急ぐ人たちとは逆方向に、私たちは進んでいた。前に来た時は、桜前線のニュースがあった頃。今は梅雨前線の時期だ。
担当の方にお声をかけていただいて、今日は娘も連れてお邪魔した。「どんなところなの?楽しみ!」と娘も未知の世界に目を輝かせていた。
19時前、会場の駐車場に着くと、参加者のアメリカ人の方と、フィリピン人の方も到着したところだった。その二人は前回もお会いしていて、ひと目見るなり「Hi!」と手を上げてくれた。
教室にはすでに、たくさんの在留外国人の皆様、日本語ボランティアの皆様がテーブルについて、談笑していた。
「あ!ご無沙汰しています。音楽の先生ですよね!」 「ははは!笛は吹きましたが、先生ではないんです〜。よろしくお願いいたします!」
まだ二度目の参加だが、温かくオープンな雰囲気に心和んだ。娘は英語で話しかけられ「???」という顔をしていたが、私の真似をして英語で挨拶をかわしてはにかんだ。
最初は、私の横に小さく座って、プリントを一人で埋めていた。だけど、フィリピンの女性が「おなまえは?」と聞いてくださり、だんだんと対話が進んでいった。
小学校で英語の先生をされている人も多く、何人もが娘に優しく声をかけてくださった。互いの名前や出身国、趣味を聞くシートがあり、娘はインタビューに答える。
「すきなたべものは?」「えだまめと納豆です!」「いっしょ!うれしい!」 「しゅみはなんですか?」「おえかきです!」「O E K A K I ?」「うーんと、えをかくことです」
娘がジェスチャーしながら言い換えると、「Ah! Drawingね!」とフィリピンの女性が笑顔になった。
そうか、「お絵描き」は日本人にとっては子ども向けの言葉だけど、日本語が母語でない人にとっては難易度の高い言葉のようだった。
いつの間にか、娘はその女性の隣に座り、おしゃべりしている。
ゲームをして交流をしたり、日本語話者の方が英語で自己紹介をしたり、学習者が日本語で話したり、両方が学びあえる構成になっていた。
ファシリテーターの方が、日本語学習者に「これ、わかる人」と投げかけると、娘も、「私も日本語学習者です」とばかりに手をあげた。国語を勉強しているから、一応日本語学習者か。
周りの学習者さんも、娘の発言に拍手をしたり、歓声をあげたり、温かく反応してくださった。
日本語訳を皆でしている時、丁寧な言い方とフランクな言い方を、娘はパントマイムやジェスチャーで表現した。学習者さんが、うなづきながらメモをとる。
学んだことのない「やさしい日本語」を、それと知らずに使っていた娘の、心の中を思う。
「楽しかった!また来たい!—わぁ、こんなに真っ暗!」
娘は公民館の外を見て声を上げると、階段を走りながら降りていった。

