高知は梼原町で紙漉き職人をしている、ロギール氏が、若き家具職人を連れて工房へお越しくださった。
24歳のプリモは、オランダ屈指の名門でデザインを学びながら、日本で木工やその周辺の文化を学ぶため、はるばる来日したという。
吉田仏師が道具について案内をし始めると、どんどん前のめりに。「彼は今よだれが出ている状態です」とロギールが笑った。
「どうぞ、写真も撮ってくださいね」と伝えると、プリモはスマホをポケットから取り出し、撮影を始めた。
こちらから切り出すまで待つその慎ましさ。道具をまっすぐ撮る彼の姿に、心が動かされた。本当に好きなのだなと。
ロギール氏もどんどん吉田仏師に質問する。
いつから、なぜ、仏像を。何時から何時まで作業するのか。道具は古いのか?作る人はどこにいるのか?紙漉きの道具を作る人も少なくなった。吉田も応える。造仏の世界もそうです、同じですね、と。
三人の職人の言葉が重なる様子は、工房見学というより、交流そのものだった。
作業場を後にし、我が家で一服差し上げた。
「これは正式な方法です」ロギールがプリモに説明している。
畳ではなくテーブルで差し上げたけれど、「美味しい!」と全部召し上がって、オランダの友たちは薄茶を二服ずつ綺麗に飲み干しだ。
一服目は作法は気にせず、二服目は客作法を簡単に体験していただいて、すい切りまでパーフェクトだった。ひととき楽しんだ。
ふと、ロギールが私の笛筒に気づいて、ハッとした。
「これは神楽笛ですか?」
龍笛です。プラスティックの笛があるので、吹いてみますか?そう差し出すと、ロギールは綺麗な音色を奏でた。梼原町で神楽笛を吹いているそうだ。
龍笛の話、雅楽の話へと広がり、プリモも龍笛を手に取った。
我が家の猫・皓月は人見知りする様子もなく、彼らの前へやってきては撫でられ、気持ちよさそうに寄り添っていた。
「うちの猫は、私が笛を吹き始めると逃げていきます」
ロギールは、皓月がまったく驚かないことに感心していた。
そのうち娘も帰宅し、習いたての英語でささやかな交流が始まった。
造仏道具の話から始まった午後は、紙漉きや木工、茶の湯、雅楽、猫、日本食へと話題を変えながら続いていった。
高知の山あいの小さな工房で、オランダと日本が心通わせた午後だった。


