現代造佛所私記 No.459「オランダより来たる友」

高知は梼原町で紙漉き職人をしている、ロギール氏が、若き家具職人を連れて工房へお越しくださった。

24歳のプリモは、オランダ屈指の名門でデザインを学びながら、日本で木工やその周辺の文化を学ぶため、はるばる来日したという。

吉田仏師が道具について案内をし始めると、どんどん前のめりに。「彼は今よだれが出ている状態です」とロギールが笑った。

「どうぞ、写真も撮ってくださいね」と伝えると、プリモはスマホをポケットから取り出し、撮影を始めた。

こちらから切り出すまで待つその慎ましさ。道具をまっすぐ撮る彼の姿に、心が動かされた。本当に好きなのだなと。

ロギール氏もどんどん吉田仏師に質問する。
いつから、なぜ、仏像を。何時から何時まで作業するのか。道具は古いのか?作る人はどこにいるのか?紙漉きの道具を作る人も少なくなった。吉田も応える。造仏の世界もそうです、同じですね、と。

三人の職人の言葉が重なる様子は、工房見学というより、交流そのものだった。

作業場を後にし、我が家で一服差し上げた。

「これは正式な方法です」ロギールがプリモに説明している。

畳ではなくテーブルで差し上げたけれど、「美味しい!」と全部召し上がって、オランダの友たちは薄茶を二服ずつ綺麗に飲み干しだ。

一服目は作法は気にせず、二服目は客作法を簡単に体験していただいて、すい切りまでパーフェクトだった。ひととき楽しんだ。

ふと、ロギールが私の笛筒に気づいて、ハッとした。

「これは神楽笛ですか?」

龍笛です。プラスティックの笛があるので、吹いてみますか?そう差し出すと、ロギールは綺麗な音色を奏でた。梼原町で神楽笛を吹いているそうだ。

龍笛の話、雅楽の話へと広がり、プリモも龍笛を手に取った。

我が家の猫・皓月は人見知りする様子もなく、彼らの前へやってきては撫でられ、気持ちよさそうに寄り添っていた。

「うちの猫は、私が笛を吹き始めると逃げていきます」

ロギールは、皓月がまったく驚かないことに感心していた。

そのうち娘も帰宅し、習いたての英語でささやかな交流が始まった。

造仏道具の話から始まった午後は、紙漉きや木工、茶の湯、雅楽、猫、日本食へと話題を変えながら続いていった。

高知の山あいの小さな工房で、オランダと日本が心通わせた午後だった。