現代造佛所私記 No.458「朧月夜」

娘が唱歌「もみじ」を歌っていた。

何も言わずアルトパートを歌うと、「???」という顔をしながら笑った。

「つられちゃう〜。もう一回!」

今度は耳を塞いで歌い始めた。娘と歌う二部合唱。歌詞の意味もよく知らないで歌っているのもなんだか可愛らしくて面白い。

映画「サウンドオブミュージック」で出会った「エーデルワイス」を歌い始めた時も、何も言わずアルトパートで合わせた。

「!」という顔をして耳を塞ぎながら、必死に自分の声を守ろうとしている。

「もう一回!」

こうして、ここ数日は母娘の合唱練習が続いている。 声がうまく重なると楽しいらしく、お風呂では「もう一回!」「今度はYちゃんだけで歌わせて!」と、夢中だ。

そして訊ねられた。「他にはどんな歌があるの?」

彼女の中から湧いてきた興味関心。待ってました、と私は迷わず答えた。

「朧月夜。とっても綺麗な曲だよ。Yちゃんと歌えたら嬉しいなぁ」

娘に朧月夜を歌って聞かせ、歌詞を、情景を解説しながら伝えた。「綺麗!かすみふかし、っていうところがすごく好き!」

日本語の妙なる響き。美しい旋律。それを分かち合える喜びは、小学校の音楽の授業からもたらされたものだと湯船で噛み締めた。

楽しそうにメインパートを半分覚えた娘。まだまだアルトパートにつられるけれど、唱歌の世界に目を輝かせていた。

「じゃあねぇ、夏の歌はある?」

朧月夜は春の歌だと話すと、すぐに問いかけてきた。

「そうだねぇ、『夏の思い出』なんかどうかなぁ」と、少し歌ってみせると、微かに頭を揺らしながらじっと聞いていた。

私自身の楽しみだけではなく、次々と世界を拡げていく子どもの好奇心を受け止められること。

小学校の音楽の時間には、一生物の宝をもらっている。