現代造佛所私記 No.454「ヒオドシチョウ」

「すごい数の蝶々がいるよ…!」

作業場に朝食を知らせる半鐘を鳴らした後、「鳩が豆鉄砲を食らったような」顔で玄関先に立つ娘。

毎年この時期、夥しい数の蝶が我が家を取り囲む。なんという蝶なのだろう。羽を閉じれば枯れ葉のようだが、開くとパッとマリーゴールドの花のような鮮やかなオレンジ色が目に飛び込んでくる。

近づくと、一斉にヒラヒラと飛び立ち、一瞬でこの世ではない場所のようになる。

うまく写真も撮れないが、なんとかオレンジの羽をデバイスに収め、インターネットで検索してみると、「ヒオドシチョウ」という種類のようだ。

発芽したばかりのバジルの周りでたむろしたり、軒下にぶら下がるようにしていたり。

「いいね」

夫も、娘も、好ましく見ている。もちろん私も。

それにしても、「ヒオドシ」とは耳慣れない言葉だ。調べてみると、緋縅と書き、日本の伝統的な甲冑(鎧)の製作技法の一つであるという。

検索すると、鎧の画像がずらっと並び、確かにその中にヒオドシチョウが混ざっていた。

立派な名前をもらったねぇ、私を取り囲んでヒラヒラ舞う彼らには、人間界の甲冑など関係のないことだろうが、雅なその舞姿と甲冑のイメージは、戦国時代の物語が生まれそうな予感を連れてきた。

そうしてぼうっと眺めていてハッとした。

バジルに卵を生んだりするだろうか?慌てて調べてみる。どうもバジルを食べるといった情報はないが、あまりにバジルの周りにたくさん憩っていたので心配になる。

彼らが去った後プランターを覗いてみると、味見されたのだろうか、双葉に茶色のシミがあった。

多少は構わない。共生できるに越したことはない。だけど、うちにもピザやトマト料理に新鮮なバジルを添えたいと願い続けている家族がいるのだから、手加減願うよ、と舞い続ける武将たちに語りかけた。