有名なコンビニエンスストアと同じメロディの玄関チャイムは、大家さんが取り付けたもの。
そのメロディが、夕方、娘の帰宅時間ごろに鳴った。
娘が帰ってきたかと思って出てみると、近所の男性だった。無言で何かごろっと入った白いビニル袋を私に手渡し、踵を返した。
袋の中を見ると、瑞々しいなすが1ダースほど。ヘタの切り口にまだ瑞々しさが残り、新鮮であるサインが見るからに出ている。男性の背中に向かって、慌てて声をかける。
「こんなにたくさん!ありがとうございます」
「礼はえいきに。配ってまわらんといかんき、忙しい!」
「この間は魚もいただいて!いただきます」
男性は、バックドアを閉めると、私に無言で右手を上げて応え、運転席に乗り込んだ。
この集落に住んで6年が経った。引っ越してきた当時と変わらない、このお裾分けの恩恵は、田舎ではよく見られる光景であると同時に、当たり前ではない思いやりの連鎖の上に成り立っている。
つい二日前にも魚をいただいて、タンドリーフィッシュを作ったところだった。
「礼はえいきに」という言葉が、ずっと心に残っている。別のご近所さんからは「気を遣わんといてね」「食べてくれたら助かるき」とも言われる。
感謝を受け入れ、気はつかうな、と関係を「完結」させない潔さ。止まらずその先へ進んでいく歩みの速さ。
都会に住む知人からは、田舎あるあると面白がられるけれど、豊かな社会を構成するとても大切な営みだと思う。
私も、この循環の中で、「礼はえいきに」を大切にしたい。
感謝し思いやりながら、さらりと次へ。
ささやかかもしれないけれど、そうした一つひとつの潔さが、社会の温かなつながりを維持しているのではないだろうか。
とれたてのうちに、美味しくいただこう。


