現代造佛所私記 No.444「正面」

「ここが正面かな」

「そうですね」

陶と植物の造形作家、内田牧子さんの個展に向けて、会場となるHOTEL MONONOBA(高知県安芸市)にて、図録用の作品撮影が行われた。

PRの一環で、取材風景を撮影した素材をご覧になった牧さんが、図録用の撮影も相談してくださったのだ。

仏像と家族くらいしか撮らないデジタル一眼レフカメラ、三脚、そして念の為の照明を携えて、力を増した日差しの中、車を東へ走らせた。

47点の焼き物を、一つ一つカメラに収めていく。その際、牧さんと正面を確認していくのだが、「ここが正面だね」と二人がはっきり同意するポイントがある。

「さおりんは、正面がわかるから助かるわ。」

牧さんは、器をスタッフさんと計測しながら、声をかけてくださった。

そういえば、器には顔があるということ、それが正面であることを、私は茶道で知った。

釉薬のかかり具合、器の肌の微妙な景色、形。迷うこともあるし、意見が異なることもあるけれど、大体正面はここだ、という顔が備わっている。

牧さんの器たちは、生き物のようだ。今にも歩き出したり、おどけたり、ふぅと一休みでもはじめそうな、躍動感のある姿をしている。

そしてちゃんと、顔、つまり正面をはっきりと持っていた。私は彼らと、ファインダー越しにお喋りをさせてもらった。

——その足がいいね、こっち向いてじっとしてて、あぁ素敵だね、もう一枚撮らせてね——。

動くはずがないのに、「じっとしてて」もないのだが、今にも動き出しそうな風情があるのだ。

MONONOBAさんの、古い民家の空気と硬質でスタイリッシュな素材がかけ合わさった空間に、そんなユーモラスな器たちが走り回っているような、唯一無二のコラボレーションが生まれている。

タイミングが合う方は、ぜひ足を運んでほしい。きっと、彼らが正面を向いて迎えてくれる。

こちらの個展「祈りの器と植物の器」、作家内田牧子氏について、5/20(水)読売新聞(高知版)朝刊に掲載。ぜひご覧ください。

アイキャッチは、撮影中の私を牧さんがいつの間にか撮ってくださっていたもの。