現代造佛所私記 No.443「ほたるぶくろと夏の始まり」

師匠が担当するお茶席の手伝いに、慶雲庵に赴いた。

真夏日を記録し始めた土佐五月。夏用の長襦袢がサラサラと心地よい。師匠はじめ、社中の先輩方は流れるように支度を整え、私もその中であれこれと動いていた。

やがて、カラッとした空気の中に、お香の香りが漂い始め、待合から華やいだ声が聞こえてきた。

山牛蒡に山ぼうし、そしてほたるぶくろ。涼やかな取り合わせが竹の花入にいけられていた。

六流派が集うこの茶会には、私は初めての参加。お点前もさせていただいた。

緊張もするけれど、師匠とお正客の和やかなやりとりに、私も力みが抜けていく。

五月晴れの中、六流派それぞれが研鑽する中、こうして流派横断的にお茶を愉しみ、喜びの場を分かち合える素晴らしいお席だった。

「吉田さん、お供えを下げてきて」

全てのお席がお開きとなり、師匠に声をかけられた。

茶心塔という石碑の前で一礼し、備えられたお茶、お菓子、お花をお下げした。何も知らなくても、自然と頭を垂れたい気持ちになった。

後で、こちらで、高知県の茶道発展に貢献した先生方をしのぶのだと、姉弟子が話してくれた。

茶の道を歩いて舗装してきた人たちがたくさん高知にもいらした。今日お集まりになった各流派の先生方も、先生となっていく兄弟子、姉弟子も、続く私も、この流れの中で心を通わせて繋いでいるのだ。

片付けが終わった後、先生に「お供えの花を持って帰って」と渡された。

その中に、紫のほたるぶくろ。帰宅した時には、暑さで萎びていたが、一晩たっぷり水を吸って翌朝にはピンとしていた。

根を出してもらえないか、一緒に山で暮らそう、そんなことを花に語りかけた。