遅く帰宅して、食事や入浴、寝支度をさっさと済ませたら、もう0時を回っていた。娘も猫もすっかり夢の中だ。
「カサ、カサ」
さぁ布団に入ろうと寝室に入ると、スタンドの灯りの下で、夫が何やら神妙な顔をして、紙に30cm定規を当てて紙を扱っている。
「まだ寝ないの?」
仏像の台座などの設計でも思いついたのだろうか、と思って覗き込むと、夫が顔を上げた。
「紙飛行機をね」
「???」
いつもなら、夫も眠る時間。それが、片膝を立てて、薄暗い中で夢中になって紙飛行機を折っている、その心は?
「これ、よく飛ぶらしい」
夫は、子どもが生まれてから、時々新しい紙飛行機の折り方を仕入れては、実験するようになった。
紙飛行機開発は世界中で進んでいるらしい。
「へぇ…」
私はそういうほかなく、布団に潜り込んだ。
「かさっ」
何かが飛んできた。小さくあれーと不満げな声が聞こえる。うとうとする私の意識の中で、おぉ、滑空した、おぉ飛んだ、と夫の声が聞こえる。
こんな夜中ではあるが、新しいおもちゃを手に入れてしまった少年のような中年を、私はそっとしておくことにした。
翌朝。
「Yちゃん、これ見て。お父ちゃんが夜なべして作ったんだよ」
朝が来ても、まだ少年がいた。
娘は朝食を口に入れたまま、「へぇ、すごいね」と一瞥もせずに相槌を打っていた。

