現代造佛所私記 No.439「梅雨前の模様替え」

少しの工夫で思いもよらぬ快適さが手に入る、その発見に、この数日、胸が空くようだ。

きっかけは、パソコンキーボードの故障だった。

Mac本体の買い替え時期ではあるのだが、まずは手元の環境で工夫できないかと、無線の安価なキーボードを家電量販店で購入してみた。

すると、ボタン一つでパソコンとスマートフォンの入力を切り替えできることがわかり、スマートフォンとパソコンモニターを並べて、サブディスプレイ環境が思いがけず整った。

次に、部屋の模様替え。

梅雨を前に、衣替えをしたり冬場の暖房器具を仕舞う時期だ。掃除をしながら、もっと便利にならないかな?とふと思いつく。

例えば、娘の勉強部屋。

元々個室のない造りで、私は台所のある土間で事務仕事をしているし、娘はクローゼットを解放した小さな空間に勉強机を置いている。しかし、おもちゃや漫画が溢れて、とても勉強できるような状態ではなくなっていた。

便利グッズを買ったり、DIYで収納を拡張することで空間を確保したり、ということが最初に頭をよぎった。

しかし、まずは、家具の配置換えをしたり、各スペースの機能を変えられないか?と家中を眺めてみた。

まずは、土間の私の仕事スペースを整理した。つみ上がっていた本や書類を取捨選択し、あるべき場所へと。すると、余白ができたので、壁にくっつけていた机を離して向かい合わせで座れるようにしてみる。

すると、娘が宿題するのにちょうど良いスペースが生まれた。テレビもない、向かいで母親が仕事をしている。ちょうど、図書館で相席しているような格好になる。

「いいねぇ!」

娘も賛同してくれた。

こうして、娘は私と同じ机で宿題をしたり、タブレット学習ができるようになった。テレビやゲーム機が別の部屋になるため、集中しやすいようだ。元の机の上は好きなお絵かきや工作の道具が並んでいる。

一つ変えると、次が見えてくる。廊下の一角にあるフック。夫の作業着や上着、娘の制服、リュックやポシェット、キャップが重なり引っ掛けられていた。一手で取れない非効率に、吉田家は飼い慣らされていた。

別コーナーのペット用品を整理してみると、フックが3つ空いた。そこへ、夫の弓道用のリュックと、娘のお泊まり用リュック、ポシェットにキャップをかけた。

「いいねぇ!」

またまた娘から賞賛の声が上がる。

不思議なもので、一つ変わると次も見つかる。

居間の棚の上の物に手が伸びた。災害用の備蓄品、手廻しラジオ、照明などが仮置きのまま、そこに置かれていた。すぐ目に着くところにあるのは、緊急時には便利だけど、棚の上から落下して破損したら?

頼りにしている災害用の一群が、埃を被っていることに申し訳ない気持ちが湧き上がる。埃をはらい、コンテナにまとめて埃避けをつけた。土間の新たなスペースに置くことを、家族に宣言した。

居間の空いたスペースには、娘や夫が作った仏像の習作を並べる。小さくて軽い、そして尊いものたち。こちらの方が、居間の高い棚にふさわしい。

こんなに長い間、不便を不便とも思わずに暮らしていた自分を不思議に思う。

目の前で、無心に算数を解いている娘の眼差しを見ながら、あぁ、こういう表情もするのだな、と手を動かしながらこっそり眺めている。

土佐の梅雨、快適に過ごせますように。