現代造佛所私記 No.437「皐月のアサギマダラ」

朝の光の中、娘と連れ立ってバス停にいく道すがら。ひらひらと目の前を横切るものがあった。

「えっ?今の時期に?」

驚いて目で追う。それは、アサギマダラだった。朝日に照らされて、美しい模様を輝かせていた。

この辺りに住んで6年になるが、5月に見たのは初めてだ。

アサギマダラは、海を越えて旅をする蝶だ。数千キロを飛び続け、季節とともに日本を縦断するという。

どの蝶々も可愛らしい。

玄関前の小夏の葉には、アゲハの幼虫がたくさんやってきたこともある。葉をむしゃむしゃと、あっという間に食べ尽くした。近づくと、黄色い臭角をだすのも可愛らしかった。驚かせてごめんね、といいながら、再び葉を食べ始める彼らを眺めながら、私も横に座り込んで昼食をとったりした。

無数のツマグロヒョウモンに、家を囲まれることもある。毎年決まった時期に、橙と黒の鮮やかな羽が、庭中をひらひらと舞う。昼下がり、それはもう別世界のようで、蝶々の楽園のようだ。

この外れにある家が、彼らにとって居心地がよいのだろうか。

どうであれ、私は歓迎している。

ただ、アサギマダラはやってこなかった。昨年秋、我が家のそばにも来てくれたらと、藤袴を植えた。花が咲いても、アサギマダラの姿は見えず、少し寂しく思っていた。

それが、こんな朝に。娘と歩く道すがら、ふらりと現れてくれた。

旅の途中、寄ってくれたのだろうか。その姿が視界から消えても、数時間経った今も、輝く羽が心に残像を残している。