現代造佛所私記 No.432「物語の先端」

GW明けの朝。

緑が眩しい内原野陶芸館のテラスで、新聞社の取材を受けた。正確には、土と植物の造形作家である、内田牧子さんのインタビューに、私も同席して見守った。

2社の新聞社。それぞれ単独で2時間のインタビューとなった。また追加取材もありそうだ。

一人目の記者さんは、まきさんの経歴を、当時の社会的背景や世界情勢と重ねながら訊いていく。まきさんが語らない背景までも汲み取り、言葉を添えて話を進めていく。紡がれる対話によって、私の中にも、その時の様子が豊かな情景となってイメージが浮かんだ。まきさんの葛藤、悩み、気づき、ひらめき、決断。それはまるで、映画のダイジェストを見ているよう。

もう一人の記者さんは、共感と寄り添いと共に、掘り下げていく。全く異なるテーマで広がりを見せた。

私も、PRに先立ち事前にヒアリングしている。でも、記者さんの質問は、さらに鮮やかだ。まきさんの来し方が、生々しく、立体的に描かれていた。

合計4時間にわたるインタビューの間、五月晴れの空の下を、燕が、すいーっと軒下の巣と森を往復していた。何度も、何度も。まきさんが、さまざまな旅を続ける中で、陶芸に都度帰ってきたことと、重ねてみる。

テラスの日差しが強くなってきた。気温が上がる。まきさんは変わらず、穏やかに涼やかに、言葉を紡ぎ、ご自分の人生や今回の催事への思いを語っていた。

陶芸、染め、そして香りの仕事。点と点が、記者さんの質問で線になっていく。いや、線というより、織物のように複雑に重なっていく。

私は、その横で黙って聞いていた。これは、まきさんの物語であり、この時代を生きた一人の人間の物語。インタビューが終わった後、私はメモを見返した。自分のヒアリングでは引き出せなかった言葉が、びっしり書き出されていた。

まきさんという多面的、重層的な人物へ、問いかけ方一つで、見える景色がプリズムのように変わる。記者さんの仕事をそばで見ながら、プロの見事な手腕に圧倒されていた。

記者さんは時々、空(くう)を見る。その見えないものを見る目線の先に、言葉や記事のイメージが次々と浮かんでいるのだろう。キラキラ、カシャカシャと、音が聞こえるような気がした。

物語の先端に、今立ち会っているのだと、絵本が読まれるのを目を輝かせて待っている子どものような心地で、テラスの風に吹かれていた。

アイキャッチ:海外活動のことは、地図を見ながらインタビューされていた。地理的に把握できると、さらに話の解像度が上がることを実感。