現代造佛所私記 No.431「潜在意識ってなぁに?」

「お母ちゃん、せんざいいしきってなぁに?」

パソコン仕事をしていると、娘が顔を覗かせた。

「えっ?潜在意識!?あぁ——こっちへきて。絵に描いて説明するね」

横に丸椅子を置いて手招きした。あぁ、あのときのだろうな、と思い当たる。

GW中、牧工房の内田牧子さんに誘われて家族で出かけたオーガニックマーケット。敷地に入る前から、幸せになる香りが漂っていた。香りをたどると、その先にまきさんのブースがあった。

「自分の香りを作れるよ」

テーブルの上の一角に興味を示した娘に、まきさんが優しく語りかけて下さった。遮光の小瓶がいくつも並び、その横に小さな水晶のネックレスがあった。まきさんが、娘の右手にチェーン付きの水晶を持たせて下さった。

娘は何も知らない。言われた通りに、小瓶の真上から水晶を垂らした。しばらくすると、水晶が揺れ始めた。

「わぁ……?!」

娘がちいさな歓声を上げた。

「これ、誰が動かしてるの?」

「自分が動かしてるんだよ。潜在意識っていってね、Yちゃんも知らないYちゃんが、今必要なものを教えてくれるの」

まきさんが答えた。

観念運動現象——顕在意識で捉えきれない膨大な情報を、潜在意識、無意識が筋運動として出力する現象だ。

横揺れだったり、クルクル回ったり。香りによって反応も強度も違う。娘は夢中になっていた。やがて四つの香りが選ばれ、まきさんがブレンドして下さった。

「いい香り!嬉しい!」

娘は、何度もシュッと髪や手元に吹きかけては、深呼吸していた。

翌日のことだった。潜在意識とは何か、と訊ねられたのは。

私は、メモ用紙を出して、流氷と海面の絵を描いた。これがYちゃんの知っているYちゃん。ここを顕在意識というの。海の下は、Yちゃんも普段知らないYちゃんの心の中。ここが潜在意識。 だから、あの香りは、この知らないYちゃんが選んだ香りなんだね。

「わかっている自分は、これっぽっちなの?不思議」

娘は、最後にこう書いて作文を締め括った。

「かいでみたら、とてもいいにおいがしました。すると、私のこころがウキウキしてきました」

そうして、ティッシュに香りを吹き付けて、帳面に挟み込んでいた。