春の土用が明けた。
「い」のつくもの、白いものを食べると良いと、明けてから知る粗忽者なりに、振り返ってみれば、ファインプレーをしていた。
芋、鯛の干物、卵かけご飯に「いしる」をかけたもの。うどんに白ごはん、大根。
土用中は、朝晩が冷えたり、日中は汗ばんだり。気温の上下が激しく、嵐の日もあった。土用であることを途中で忘れていたが、毎日のサラダは蒸し野菜にして、土いじりを控えていた。結果的に雨にも濡れず、風にも当たらず、体を労わることになった。
何も考えていなくても、体は季節を知っていると、感心する。
ゴールデンウィーク中も、遠出をすることもなく、工房は普段と変わらない。けれど娘は学校が休みなので、一緒にプリント整理をしたり、古いノートを片付けたり。いつもじっくりできない片付けが、ゆっくりできた。
そうしているうち、スッキリ晴れた朝に、差掛けを伝うノイバラが満開になった。白いホイップクリームのように咲き綻んだ花たちが、小さな平屋を飾り、蜜虫たちの憩いの場になった。彼らの到来を毎年楽しみにしている。
母が言っていた。
「この花の刺し枝は八発百中よ」
その通りに、実家から持ってきた二十センチほどの枝が、今や差掛けを覆っている。
人が土用で手を止めている間に、ノイバラはポンポンと開花していく。
さぁ、冬の間空席になっていたプランターにも、そろそろ土を入れよう。
手のひらに、茶封筒を重ねてみる。バジル、パクチー。昨年種を採って、土間に置いていたものだ。バジルの黒く小さな粒。パクチーの硬い粒。封筒の中でサラサラ、シャカシャカと小さな音を立てている。
芽が出ても、カタツムリやなめくじに完食されたこともある。うまく逃れて旺盛に育ったこともある。今年も楽しめますように。
別の封筒には、ビオラの種も控えている。こちらは、また次の季節に。
土用が明けた。


