現代造佛所私記 No.428「清浄なる歓喜団」

「これ持っていって」

あるお寺に訪問し、用事も終わってくつろいだ別れ際。ご住職から、夫がビニル袋を受け取った。

「えっ、こんなに、いいんですか」

恐縮する夫の手元の袋には、ゴロゴロとした茶色いものが十個ほど見える。子どもの握り拳大くらいだろうか、色合いといい寸法といい、唐揚げのようでもある。

車中で袋を改めると、それは、清浄歓喜団という菓子であった。五センチほどの高さで、巾着のような形をしている。奈良時代に唐から伝わった、密教の供物である。

知ってはいたが、実物は初めてだ。

仏様からのお下がりなのだろうか。それとも、私たちのために特別にご用意くださったのだろうか。

わからないし、聞くのも野暮だ。

「ストーブで温めてから食べるといいですよ」

ご住職が一言添えて、見送ってくださった。

帰宅後、私たちは、そのままをまずいただいた。

カリリ、と歯音とともに、パラパラと皮が落ち、あわてて手で受ける。思ったより硬い。ごま油の香りが顔の周りを覆った。

中の餡は、控えめな甘さ。その中に、丁子や桂皮の香りだろうか。好んでいるお香の香りとそっくりな風味が、鼻腔から抜ける。

お菓子というより、妙薬といった趣だ。

「お線香食べてるみたいだね」
吉田仏師も笑った。

ごま油と香料の香りが、まだ鼻腔に残っている。奈良時代や平安時代の仏師も、こうして食べたのだろうか。

今度は、温めて、割って食べてみるとしよう。