現代造佛所私記 No.423「青柳」

山の展望台から、かすみがかった太平洋が見える。遠い岬は、ぼんやりと霞んでいた。 今日はお客さまを迎えて、この展望台で野点風のお茶の席を用意している。

風呂敷を解き、竹カゴを開けると、朝ふるっておいた抹茶と、お茶の道具、そして和菓子の箱がきっちりと並んでいた。

箱の包装紙の上には、端正な筆文字で「青柳」と書かれた札。手書き…と小さくつぶやく。

高知でお茶を始めてから、和菓子がもっと好きになった。中でも菓仙山本さんの大ファンだ。カステラが美味しいことで有名な老舗である。 茶席の手伝いで山本製の主菓子を扱うことは多々あったが、自ら予約して買い求める日が来ようとは。

昨日、お店まで車を走らせた。入るとすぐ左手に、受け取りを待つ箱入りのカステラが、三段ずつくらいの山を3つほど作っていた。月曜日にも、こんなにカステラを買いに来る人がいるのか。私の前で会計をしていた人も、カステラの袋を手にしていた。

自然と、カウンターの女性と目が合う。予約名をいうと、すでに私との間にあった白い袋を手渡してくださった。 「このまま、常温で明日までおいてください」 「冷蔵庫に入れずに、ですか」 「はい、室温でおいて大丈夫です」 女性は手早くレジを操作しながらいうと、にこりと笑った。

展望台の東屋で、その和菓子の箱を吉田仏師が開く。懐紙の上にそっと一つずつ乗せ、「どうぞ」とお客さまに勧める。

真っ白な懐紙の上に、若草色の青柳。

自宅から持ってきたヤカンを風炉釜に見立て、すっと柄杓を構えた。ステンレスとカセットコンロの湯相も悪くない。

蝶々が舞い、木々の間から、小鳥の声が聞こえてきた。