現代造佛所私記 No.414「利休忌の朝」

薄曇りの朝。

行きがけはポツポツ雨がフロントガラスを叩いたが、目的地のお寺に着いたときにちょうど止んでくれた。着物の日は、雨がない方がありがたい。

今日は、例年より少し遅めの利休忌。茶人にとって、年に一度、利休居士の遺徳を偲ぶ大切な日だ。

出かける前、帯のことで少し迷った。赤みのある帯、金銀糸のあるものは控えるように、と姉弟子から聞いていたが、締めようと思った宝相華の帯は、ほんのり赤みがあった。考え込んでしまった。こういうとき一番に相談する母は、まだ夢の中の時間。

一度は締めた帯を解き、手持ちの帯を三つ並べて考え込む。結局、いつもの暗色の雅楽器柄の一本に落ち着いた。

会場に着いてみると、思いのほか華やかな帯の方が多かった。えんじの帯、白地に赤紋様の帯、金糸の帯——。それぞれの先生方の哲学や美意識が、それぞれの装いに宿っている。利休忌は、利休居士の御遺徳を偲ぶこと。禁止事項を数えるのではなく、場との調和や格式に合う取り合わせが大切ということなのだろう。

同じ社中の、稽古日の異なる諸先輩方にも久しぶりにお目にかかれた。皆様がお元気そうで、再会に笑みが溢れた。

利休像をお祀りした法要では、美しく響く観音経。会場の手伝いをしながらしばし耳を澄ませた。皐月の予感を含んだ微風が、堂内に漂う。

薄茶、濃茶。季節の美しいお菓子。素晴らしいお道具の数々。縁側の向こうには枯山水、瑞々しい新緑が雨上がりの空気の中で光っていた。