夜更けのモニターの光が、机の上を照らしている。フォントの行間を一ミリずつ詰め、文字の重なりを微調整する。
足元には今季初めての電気ヒーター。夜半はコンクリートの上での作業が堪える。時間の感覚が遠のき、目の前の一枚をただ磨き上げる。
PR事業では、チラシ作成も請け負っている。今回は、新春の公演チラシを作っていた。本来なら今日が入稿の予定だった。
だが、昨夜、大幅転換してデザインを一新することになった。猛スピードでペンタブレットを動かす。
色の濃淡、余白の角度、言葉の置き方。どれも些細な違いのようでいて、ひとつ動かすたびに世界が変わる。
そんな間にも、修正やご希望のチャットがくる。クライアントさんが苦笑いの絵文字を添えて。「私、こだわりすぎでしょうか?」。そんな一文が届いた。
私は迷わず返す。
――神は細部に宿るといいます。
こだわりは、お客様の体験に直結するものですので、大切にしたいです。
このギリギリの時間の中で、祈るように手を動かしている。2ヶ月先のその時間の気配に意識をあわせながら、手を動かす。
クライアント様とは、それぞれの理想を探り合いながら、目には見えない一点の「正解」を追い求める。
デザインは、誰かのために形を整える仕事だ。だがその過程で、いつも自分の内側の何かも整えられてゆく気がする。
明日、印刷所に送るその瞬間まで、祈り続けたい。
この一枚が、誰かの胸の奥で灯りとなることを願って。

