現代造佛所私記 No.238「メディアリレーション」

テレビの番組審議委員会へ出かけるのは、この秋で三度目になる。

事前に届くDVDを見て、感じたことをノートに書き留めておく。

当日は、集まった委員の方々と、テレビ局の方々と言葉を交わす。会議の冒頭では、前回のフィードバックを受けて番組がどう変わったかという報告があって、制作者の皆さんの、ひとつひとつを丁寧に受けとめようとする姿勢にいつも襟を正される思いがする。

それぞれの立場の方が委員としていらしている。私はといえば、子育て世代の一人として、またPRの仕事に携わる者として末席を汚している。

保護者としての視点や、「ヘッドラインがもう少し感情に働きかける感じにされると、より”見たい”気持ちが喚起されるのでは」といった、いくぶん職業的な視点から意見を述べた。けれども一方で、前回よりも情報の動線が格段に良くなっていること、家事をしながら耳だけで追っても、すっと意味が届いてくる構成の工夫には、素直に感心した、そんなこともお伝えした。

ほかの委員には、映像制作のプロフェッショナル、地域の教育関係者、消防団の方などがいらっしゃる。それぞれの角度から語られる意見はどれも新鮮で、「テレビ」というものが地域にとっていかに多面的な存在であるかを、毎回のように教えられる。

オールドメディアは、しばしば批判の的になる。けれども、こうして一つひとつの番組を誠実に磨き上げようとする現場を知ると、テレビという灯はまだ消えていないのだと思う。画面の向こうにいるのは、たしかに人で、その手のぬくもりが届く限り、地域のメディアには静かな光があり続けるのだろう。

そして今回は、会議のあとに少し嬉しいことがあった。

ふだん私は、PRプロデューサーとして、メディア各社へプレスリリースをお送りする立場にある。けれど最近は、逆に「情報源」として頼りにしていただくこともポツリポツリと出てきた。気軽に、お話しして、互いに情報交換することもある。

今回の審議会の帰り際、担当の方に「今度の週末、こんな子供のイベントがあるんですよ」とディレクターさんにお声をかけた。立ち話で情報提供という形で共有したところ、「それはいいですね。ただその日はスタッフが出払っていて……、念の為資料をいただけますか?」とのこと。

翌日電話があり、当日、私がビデオをお借りして撮影し、素材をお渡しする形をご提案いただいた。

私自身、保護者としてそのイベントに参加する予定だったので、喜んでお引き受けした。地元の人たちの活動を映像として残し、地域のニュースとして伝えていく。それは、地域の活性化につながり、一人ひとりの誇り――シビックプライドを育てる大切な営みだと思う。

住民が情報提供者として、より良い地域の姿を発信する。それは、専門職でなくともできる、自ら暮らしの根っこを支える営みだ。

メディアリレーションとは、報道機関と良好な関係を築き、継続的なコミュニケーションを行うこと。

PRプロデューサーとして、メディアの皆様と協力し合えることの喜びやインパクトをつくづく感じる。

「思いの灯」というものは、時にはこのような形で手渡されていくものなのだろう。