現代造佛所私記 No.14「小さな仏師」

私たちには8歳になる娘がいる。

赤子の頃から父親の彫刻室で過ごし、ヒノキの香りに親しみ、多くの仏像に囲まれ育ってきた。出張先にもよく連れていったので、お寺にも多く訪れている。

「ぶつぞうさん!」

彼女は、仏像全体のことを親しみを込めてそう呼ぶ。

2歳の頃のことだ。
自宅の救世観音立像の前を通り過ぎようとしたとき、何か思い出したように踵を返した。「はて、どうするのかな?」と見ていると、救世観音に正対し、合掌して頭を下げた。

用が済んだという体で、おもちゃの部屋へよちよち歩きの名残ある足取りで入っていった。

私はあの光景を忘れることができない。

彼女は、あれから幾度となく仏像をモチーフにした絵を描いている。

地蔵菩薩、釈迦如来、阿弥陀如来、不動明王……。

中でも一番好きなのは、薬師如来だそうだ。その理由は?「薬壺の形がかわいいから!」

いつからか、本を見ながらノートに仏像の特徴や時代を代表する作例をまとめるようになった。自分なりに仏像研究をしているのだ。

その賜物なのだろう、御仏にそなわる32種類の身体的特徴が、彼女の仏像には描かれている。

最近は、紙粘土で如来像を作るようになった。

「ラホツはね、一つ一つ小さなおだんごを作ってつけるといい感じ!」

今後は、仏手や宝剣、宝珠、薬壺を作る予定だという。

お像に真っ直ぐ合掌し、頭を垂れた心のままに、小さな仏師は今日も造仏に勤しんでいる。