現代造佛所私記 No.13「オンコロコロ」

「まずい、昨日体を冷やしてしまったかな?」
全身の肌がざわめいて、股関節が軋み始めた。

午後にかけて頭が鈍く痛みだし、「あぁこれは熱が出てくるなぁ…」と諦めの気持ちでキーボードを叩く。

最近のジェットコースターのような寒暖差には用心していたが、寝不足続きの体で不用意に外気に当たったのが災いしたか。

なんとか仕事を片付け、布団に潜り込む。体が熱くなってきた。体温計は37.5℃を示している。

「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」

体調を崩したことを知ると、いつも薬師如来のご真言を送ってくださる方がいて、そのたびに私もありがたく心でお唱えしている。

この時も、心配してご真言を送ってくださった。また、SNSで多くの方が温かなお見舞いのメッセージをお寄せくださった。「あぁお薬師様の化身だ〜」と、胸を熱くした。

ぼんやりとした頭で「オンコロコロ…」とお唱えしていると、何かがポロポロ、コロコロと剥がれ落ちるようで、どことなく爽快な心持ちになってくるから不思議だ。

そして、心は薬師如来様のお姿を想起しはじめる。

心に浮かぶお薬師様は、遠くに見えたり、拡大鏡で拝んでいるのかと思うほど間近に見えたりする。私の魂がふらふらしているのだろうか。

薬師如来は、あやゆる病を治すことのできる霊薬が入っている薬壺(やっこ;薬のつぼ)をお持ちだ。

「オンコロコロ…」何度お唱えしただろう。やがてすっぽりと薬壺の中におさまったかのように、静かで深い眠りについた。

幸いこの風邪は早々に退散してくれた。

お薬師様のお慈悲に合掌。
生きとし生けるものが苦しみから解放されますように。