「まずい、昨日体を冷やしてしまったかな?」
全身の肌がざわめいて、股関節が軋み始めた。
午後にかけて頭が鈍く痛みだし、「あぁこれは熱が出てくるなぁ…」と諦めの気持ちでキーボードを叩く。
最近のジェットコースターのような寒暖差には用心していたが、寝不足続きの体で不用意に外気に当たったのが災いしたか。
なんとか仕事を片付け、布団に潜り込む。体が熱くなってきた。体温計は37.5℃を示している。
「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」
体調を崩したことを知ると、いつも薬師如来のご真言を送ってくださる方がいて、そのたびに私もありがたく心でお唱えしている。
この時も、心配してご真言を送ってくださった。また、SNSで多くの方が温かなお見舞いのメッセージをお寄せくださった。「あぁお薬師様の化身だ〜」と、胸を熱くした。
ぼんやりとした頭で「オンコロコロ…」とお唱えしていると、何かがポロポロ、コロコロと剥がれ落ちるようで、どことなく爽快な心持ちになってくるから不思議だ。
そして、心は薬師如来様のお姿を想起しはじめる。
心に浮かぶお薬師様は、遠くに見えたり、拡大鏡で拝んでいるのかと思うほど間近に見えたりする。私の魂がふらふらしているのだろうか。
薬師如来は、あやゆる病を治すことのできる霊薬が入っている薬壺(やっこ;薬のつぼ)をお持ちだ。
「オンコロコロ…」何度お唱えしただろう。やがてすっぽりと薬壺の中におさまったかのように、静かで深い眠りについた。
幸いこの風邪は早々に退散してくれた。
お薬師様のお慈悲に合掌。
生きとし生けるものが苦しみから解放されますように。