童学寺(徳島県)さまの薬師如来坐像の台座と光背につきまして、前回の昨年11月の記事以降のご報告です。ついに完成しました。
本プロジェクト開始についての経緯はこちら→「火災で焼けた台座・光背の製作開始」
前回の記事はこちら→「台座の荒彫り(童学寺様)」
その後、台座・光背とも、その後順調に彫り進めておりました。
今年1月、蓮弁製作の様子をインスタグラムのリール動画でご紹介しました。でぜひご覧ください。途中で台座に当てて確認しながら全部で48枚作りました。
5月、保存科学の観点からも良い品質でご安置できるよう、松島朝秀先生(高知大学)と仕上げの詳細について協議いたしました。
最先端の文化財の保存科学の知見と仏師の経験をテーブルに乗せ、細部の彫刻表現にはじまり、ご安置環境の湿度を考慮した絵の具の選定、蓮弁の固定に用いる材料などについて相談しました。
松島先生から、ご仏身を引き立てるための古色彩色について具体的な色合いをご提示いただいたり、金具は強度より耐食性の高いものを用いる等、多くのご助言をいただきました。誠にありがとうございました。
7月、光背に7体の化仏も配され彫刻完成。
SNS等で多くのご感想をいただき本当に嬉しく思いました。
同月、共同代表の吉田沙織が、高知新聞で連載中の「閑人調」というコラム内で本プロジェクトについて執筆。→高知新聞7月23日朝刊「平安の意匠」(無料・要登録)
このコラムがきっかけで童学寺様の過去のニュース記事をご覧くださった方が何人かいらっしゃいました。今後もぜひ、童学寺さまの再建プロジェクトを見届けていただけたらと思います。
こうして、文化庁と童学寺様とまとめた基本方針のなかで、大事なポイントについては専門家に意見を求めつつ慎重に進めてまいりました。
作例の少ない平安時代当初の光背を参考にするため、高知から奈良のお寺まで拝観に行ったりもしました。
振り返ると着手から2年。
予定より時間がかかってしまいましたが、今月ようやく完成いたしました。
台座光背の完成画像です。ご仏身を汚損しないよう着座部分は無塗装です。
経過を見守ってくださっていた皆様は、どうなっただろうと心配されていたことと存じます。温かく見守ってくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。
お納めするまで気は抜けませんが、ひとまずほっとしております。
正式なお披露目までもうしばらくお待ちください。
まずは完成のご報告まで
よしだ造佛所
代表仏師 吉田安成
スタッフ一同