現代造佛所私記 No.68「緑の祝祭」
サラサラと流れる川の音にふと気づいたのは、土間で夢中でパソコンに向かっていたお昼前のことだった。 今朝方は少し肌寒かったので、火鉢をつけていた。気温が上がってきたのと、換気のために川側の戸を開けて風を入れていたのだ。 絶...
サラサラと流れる川の音にふと気づいたのは、土間で夢中でパソコンに向かっていたお昼前のことだった。 今朝方は少し肌寒かったので、火鉢をつけていた。気温が上がってきたのと、換気のために川側の戸を開けて風を入れていたのだ。 絶...
遅い朝食を済ませ、台所を片付けた私は、土間にある仕事机に腰を据えた。 「さて、始めるか。」 キーボードの上に両手を軽くかまえる。 6月中旬にある文化財の学会に向け、要旨集の原稿に向かう。今日は昭和の日。世間ではゴールデン...
「部屋とワイシャツと私」、みたいなタイトルになった。 締切前の仕事に思いのほか時間がかかり、夜更けになった。 少し冷える春の夜。火鉢に火を入れてみようと思い立った。 久しぶりの炭火だ、と思うとワクワクする。良い気分転換に...
春の鳥たちの声が遠くに聞こえる、高知の山間。 人気のない山奥の仏像工房で、一つの像が完成しようとしていた。 「カサ、カサカサ…」薄葉紙の乾いた音が、耳をくすぐる。 傷つけないよう、そっと包みをほどくと、像の朱色の衣がふわ...