現代造佛所私記 No.38「誕生仏と茄子」
今日は花まつり。お釈迦さまの誕生日だ。 夫と娘は近くの寺の花まつりに出かけたが、私は外せない仕事があり、気づけば夕刻を迎えていた。お下がりの甘茶をいただきながら、一息入れる。 例年、我が家では筍=仏影蔬(ぶつえいそ)を誕...

今日は花まつり。お釈迦さまの誕生日だ。 夫と娘は近くの寺の花まつりに出かけたが、私は外せない仕事があり、気づけば夕刻を迎えていた。お下がりの甘茶をいただきながら、一息入れる。 例年、我が家では筍=仏影蔬(ぶつえいそ)を誕...
日華が旅立って2ヶ月が過ぎた頃、テンとロイロがいつの間にか家を離れた。 テンは山道で再会し、一度は家に帰ってきた。だが、再び隙をついて脱走しそれっきりだ。ロイロはもう2年姿を見せていない。 それでも、テンはまだ山のどこか...
嘘だ、と思った。 突然の別れを、受け入れるのはむずかしい。体に触れれば、まだ温もりが残っている気がして、目を閉じれば、いつもの声が聞こえてくる気がした。 段ボールに毛布を敷き、そっと体を寝かせる。どうしても出かけねばなら...
日華の子猫たちが生まれてから、健康管理のため体重を毎日測った。 素晴らしい健康優良児っぷりで、早々に測定をやめることになるが。 里親を探していたので、子猫たちは便宜的に「クロイチ(黒1)」、「シロクロ(白黒)」、「クロニ...
黒猫マダム・日華の臨月が判明した3日後、午前3時。 彼女は静かに産気づいた。 「ニー!ニー!」という、かすかな鳴き声が、夜の沈黙を破った。 日華はゴロゴロと喉を鳴らしながら、生まれた赤ちゃんをせっせと舐め、第2子、第3子...
8月の終わりに奇跡が起きた。 その日は、予定外の用事で帰宅が日暮になった。 「ずいぶん日が短くなってきたね」などと話しながら、星が瞬き始めた山の麓に差し掛かった時だった。 白い影がさっと車の前を横切った。 「あれ、今のっ...
猫2匹との生活が始まり、家の中が狭くなった。 先住猫の皓月(雌、生後7ヶ月)と、治療中のため隔離された日華(雌、推定7歳)は、ケージ越しに微妙な距離を保っていた。 「気が合わない猫は一生気が合わない」 動物病院でそう聞い...
涙目と一生付き合っていく運命を背負ったものの、すっかり元気になった保護猫・皓月(こうげつ)。 スクスク成長し、鹿子柄の青い首輪がよく似合うお嬢さんになった彼女は、避妊手術を迎えるまでになった。 そんなある日、不思議な因果...
山道で保護した猫の皓月は、重度の猫風邪とコクシジウム症で、治療が必要とのことだった。 自宅で駆虫剤を飲ませながら、インターフェロン治療のため5日間連続で通院した。時間のやりくりは大変だったが、とにかく元気になってほしい一...
十三夜に突然現れた白い子猫。 家に連れ帰り灯りの下で見れば、目脂でまぶたが開かない。声も掠れ、どうも匂いも分からないらしい。水すら自分で飲めず、衰弱していた。 ペットボトルの湯たんぽを作り、土間に寝床を整えた。 秋深まる...