カテゴリー: 家族の肖像
現代造佛所私記 No.215「玄関先の緑」
玄関先のプランターには、バジル、ミント、パセリ、タイム、ローズマリー、ラベンダ──。 小さな庭のように、いくつものハーブが根を張っている。 始まりは、実家からもらった一本のローズマリーの枝であった。短い枝先から根が出て、...
現代造佛所私記 No.212「小夏とはらぺこ青虫」
昨年の夏、実家で採れた小夏を家族で食べた。娘が種を「ぺっ」と吐き出す。その粒を空いた鉢に埋めてみたら、やがて芽が出た。苗木は五つ。今ではどれも一尺ほどになっている。 芽が伸び始めたころ、夫と「どうしようか」と話した。地に...
現代造佛所私記 No.210「異国の台所から(後編)」
「枝豆は娘の大好物だ。きっとそのことも覚えていてくれたのだろう。遠い異国の台所に、我が家の記憶がよみがえっていることが、なんと愛おしいことか。」 胸がジーンと温まるのを感じながら、私は慌てて返信を打った。 「Dear M...
現代造佛所私記 No.208「栗のお裾分け」
玄関のチャイムが鳴った。 秋風の立ち始めたある朝のこと。扉を開けば、大家さんがそこに立っていらした。手には白いレジ袋。持ち手が中身の重みで、ぴんと張り詰めている。 「これ、栗です。どうぞ」 袋を覗けば、鬼皮に包まれた艶や...
現代造佛所私記 No.207「石段」
彼岸花の赤が道端に燃え、フジバカマの薄紫が風に揺れている。柿の実が重たげに色づき、青い柚子がぽってりと膨らみはじめた。 誰もいない細い参道を歩けば、雨上がりのぬかるんだ土が、チャ、チャ、となる。サラリとした微風が耳たぶを...
現代造佛所私記 No.206「夏休みの自由研究 その後」
先日、市の図書館で開催されている、子どもたちの自由研究の展示を見に行った。 会場に足を踏み入れると、ほんのりと糊や紙の匂い。図書館の静謐な空気とは対照的に、なにか生々しい創造の匂いがした。 壁一面に並ぶ模造紙、テーブルに...











