カテゴリー: 仏像と人の物語
現代造佛所私記 No.230「四百の出会い」
今日で四度目となる、生涯大学での講義。 それぞれ別のクラスゆえ、この話を聞くのは初めての方ばかりである。一クラスおよそ百名。単純に数えれば、これまでに四百人ほどの方々に、私たちの工房の造仏や修理についてお話ししたことにな...
現代造佛所私記 No.223「観音様のような人」
快晴。金木犀の香りが色濃く、日差しに力を感じる朝だった。今日は生涯大学での三度目の講演。午前中、資料と原稿に最後の目を通し、車で小一時間ほどの会場へ向かう。正午近く、秋の陽は容赦なく降りそそいでいた。 文化施設の最上階に...
現代造佛所私記 No.214「ベルリンからの便り(後編)―小さな芽から」
(前編まとめ) 七月上旬、ベルリンに住む青年Mさんから一通のメールが届いた。「あなたの仕事が木工家具とは直接関係がないことは承知しています。無礼な申し出と思われないかと案じておりますが、日本で木工や家具製作の実習先を見つ...
現代造佛所私記 No.213「ベルリンからの便り(前編)―偶然の符合」
七月上旬のことだった。ベルリンに住む青年Mさんから、一通のメールが届いた。 「あなたの仕事が木工家具とは直接関係がないことは承知しています。無礼な申し出と思われないかと案じておりますが、日本で木工や家具製作の実習先を見つ...
現代造佛所私記 No.210「異国の台所から(後編)」
「枝豆は娘の大好物だ。きっとそのことも覚えていてくれたのだろう。遠い異国の台所に、我が家の記憶がよみがえっていることが、なんと愛おしいことか。」 胸がジーンと温まるのを感じながら、私は慌てて返信を打った。 「Dear M...
現代造佛所私記 No.209「異国の台所から(前編)」
秋空に揺れる尾花を見ながら、心はどこか青葉の季節を思い浮かべていた。 五月の風が心地よい高知に、ドイツの若き木彫家Mariekeがやってきたあの日のこと。よしだ造佛所のインターンとして仏像製作を学ぶために、初めての日本に...
現代造佛所私記 No.200「粉塵の中の祈り」
きのう、県外のお寺にて仏像の応急処置を行った。 手拭いを頭に被り、ヘッドライトをつけ、黒い作務衣に黒いパンツで堂内に足を踏み入れる。 薄暗がりの中で、だんだんと衣はほこりに白く染まっていく。何十年、いや百年単位で積もった...
現代造佛所私記 No.196「不動と榧」
正午の夏の名残の日差しの中で、完成したばかりの不動明王立像を撮影した。 一本のカヤ(榧)から彫り出されたその姿は、憤怒の相を現しながらも、どこか慈愛に満ちた気配を漂わせている。 施主が望まれたのは、子どもたちを守る本尊と...











