現代造佛所私記 No.436「白湯」
「白湯?ただの湯?」 一日の終わりに最後の白湯を飲みながら思い出す。今から11年ほど前になる。 晩秋に富山の木彫家の師匠宅を訪ねた時、飲み物を勧められた。コーヒー?紅茶?と訊かれて「お白湯がありがたいです」と応えた私たち...

「白湯?ただの湯?」 一日の終わりに最後の白湯を飲みながら思い出す。今から11年ほど前になる。 晩秋に富山の木彫家の師匠宅を訪ねた時、飲み物を勧められた。コーヒー?紅茶?と訊かれて「お白湯がありがたいです」と応えた私たち...
「これ持っていって」 あるお寺に訪問し、用事も終わってくつろいだ別れ際。ご住職から、夫がビニル袋を受け取った。 「えっ、こんなに、いいんですか」 恐縮する夫の手元の袋には、ゴロゴロとした茶色いものが十個ほど見える。子ども...
風の強い日だった。 工房から車で40分、農免道路を辿って北西へ。街の山際に、そのお寺はあった。駐車場から見上げた石段の先で、インド風の釈迦如来の石像がこちらを見下ろしておられた。 石段を登った先に庭。そして本堂と庫裡が現...
ここのところ、個人からのご依頼で、小さなお仏像の造像が続いている。 最近工房にお越しくださったある男性は、もともとは仏像に興味はなかった、とおっしゃった。それが今、観音様や如来様の並ぶ工房で、仏師と親しく話している。 「...
さ、さ、と木を削る音がする。その背景に川のせせらぎ、小鳥の声。ときおり、木端をはらう吉田仏師の吐息も混じる。木の香りに包まれた彫刻室で、今日はこれを書いている。 以前のコラムで、造仏の文化がアジアに広く根を持つことを書い...
その厚い封書が届いたのは、雅楽演奏会が終わって数日が経った、桜満開の頃だった。 差出人は、年上の友人として慕っている、郷土史家の原田英祐さんだ。友人だと、私はいつも思っている。なぜ「友人」と思うのか、自分でも不思議だ。き...
美術・工芸の国際的な名鑑プラットフォーム、Homo Faberに、吉田仏師のページがある。そのページの完成の報を受け取り、はじめて拝見したとき、最も感動したのが、仏師を「busshi」という文字で表記してくださったことだ...