材料

できるだけその地で育った木を

「仏縁を結び、仏教の教えを伝える」

そんな大切な役割を持つ仏像をできるだけ長く残そうと、私たちの先祖は古くから土地土地の風土、文化、時勢に応じて材料・技法を工夫してきました。

海外では石や金属、土などのお像も多く見られますが、日本ではその森林率の高さと木の文化を背景に、木製の仏像が主流となりました。

現在、最も質が良いとされているのはヒノキですが、お像に適した木は他にもたくさんあります。

当造佛所でも、ケヤキ・カヤ・樟(クス)・桂(カツラ)・桜など、様々な木材で造像しております。仏師がお像に適した材木を直接買い付ける他、施主様からお持ち込みいただくことも。

いずれにしても、私たちが大切にしている基本理念があります。

できるだけその土地で育った材を用いるということ。

何百年と経った仏像でも、修理するときなどイキイキとした木の香りがしますし、急に気候の違う場所に移すと割れてしまうことがあります。

つまり、木はお像として生まれ変わった後も、何百年と呼吸し生き続けているのです。

生きているからには、その木が育った環境に近い方が長生きしやすい、すなわちその土地の人々と代々永く共に在れると私たちは考えます。

国産木は貴重なものとなってきましたが、地元の材を用いることはその土地の人々にも愛着を持っていただき、自然環境に関心を向けていただくキッカケにもなるのではないかと思います。

お像の崇高さ・品格を損なわない木の風合いを保ちつつ、次世代に日本の素晴らしい自然環境と技・知恵をつなぐこと。

よしだ造佛所の使命のひとつと考えます。

※2017年11月個展「安成展−慈しみ宿す木々」(高知市)の売上げの一部を「高知県森林環境保全基金」に寄附いたしました。今後も、森林環境の保全・発展に微力ながら寄与できますよう取り組んで参ります。