彩色(さいしき)

希少な画材、手仕事の妙

截金・彩色担当 並木秀俊 (Hidetoshi Namiki)
日本画家・日本美術院 院友・東京藝術大学 非常勤講師・博士(文化財)

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岩絵の具–鉱石の煌めきそのままに

日本では古くから「岩絵具(いわえのぐ)」という、天然の鉱物から作られた絵の具が使われてきました。 昔は世界中でも用いられてきた岩絵具ですが、実は最近まで日本でしか使用されていませんでした。 これは、常に伝統を重んじてきた日本だからこそ残され、その材料や技法の継承の裏には、仏教美術によって受け継がれてきたという背景があります。

よしだ造佛所の彩色は、お像を引き立て、長持ちするものであることはもちろんのこと、天然岩絵の具を中心に彩色を施していきます。  近年では人工で作られた安価で色数も多い「新岩絵の具」が登場し岩絵具が身近になりましたが、自然から色を分けてもらうような天然の岩絵の具は、人工のものにはない微細な風合いの発色があり、何億年もかけて精製されてきた色の魅力があります。

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希少な材料を、熟練の職人が丹念に塗りこめていく作業は、本当に贅沢なことかもしれません。
しかし、「仏の教えを具現化している」といわれるお像にこそ、そのような材料・技術がふさわしいのではないかと私共は考えます。

「世代をこえて受け継がれていく、千年先を見据えた手仕事を」
よしだ造佛所のこだわりです。


膠(にかわ)

岩絵具の接着剤として用いられてきた膠(にかわ)は、動物の皮から抽出されたものが広く使われています。 これは千年前の文化財が受け継がれてきていることから解るように、膠が安定した接着剤であるためです。

弊所ではこの膠にもこだわり、化学薬品を使用しない国産の古典的膠の他、中国の古文書に出てくる写経用の墨作りに使われた、生え変わりで抜け落ちた鹿角から抽出する膠(画像)も使用しています。

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※この鹿角の膠は、墨と膠研究の第一人者でもある宇高健太郎氏に依頼し、薬品等の処理は一切行わずに作成しています。