師走到来、成道会によせて

師走と共に、温暖な高知にもはっきりと冬が到来しました。よしだ造佛所の女将、吉田沙織です。

成道会を明日に控え、季節ももう冬本番という感じですが、少しだけ秋を振り返らせてください。残暑厳しい9月の初め、節句のしつらいに菊の花を求めた帰り道に吉田がポツリとつぶやきました。「季節に遅れる苦しさ、あれは何なんだろうね。」

私はその苦しさから逃れたくて、季節のしつらいをしているところがあります。この「苦しさ」は、本来すべきことを後回しにした後悔でしょうか。過ぎ去った過去や根拠のない不安に振り回された結果かもしれません。吉田の言葉を受けて、改めて「季節を楽しもう」と、娘と重陽の節句の支度をしたことでした。

そんな秋深まった11月のある日、私事ですが思いがけない事故で愛猫を失いました。保護した時から「いつか来る別れの時に出来るだけ後悔したくない」という思いで関わってきた小さくも愛おしい存在でした。

山道で保護した猫で「日華(にっか)」と名付けました。警戒心が強いまま懐いてくれた猫でした。

突然やってきたその瞬間、大きな悲しみと「ついに来たのだな」という感慨、出会えた感謝が溢れてきました。出会えた喜びが、彼女を失った悲しみを包み込んでいるような感覚でした。

同じ頃、私たちは仕事で苦しい局面を迎えて打開策を講じる毎日でした。「事業所としてもっと変わらなければ」「社会に何ができるのだろう」と、吉田と毎日話し合っておりました。その流れの中で、これまでご縁をいただいた方々に連絡を取らせて頂いたのですが、皆様から予想以上の温かいお言葉、叱咤激励、たくさんのありがたいお言葉を頂戴しました。本当に本当にありがとうございました。(ご許可いただきましたお声を、「お客さまの声」に掲載させていただいております。ぜひご覧ください。)

以前の私なら、きっと悲しみに委ねて自ら望んで季節に取り残されていたことでしょう。でも、この秋は、悲しみも不安も全て愛おしく抱きしめて、日毎に色づいていく木々を美しいと思って過ごすことができました。

ありがたさと悲しみと混じり合った涙で泣き腫らした晩秋、じっくり四苦八苦を観じて一つの覚悟ができました。私は彫刻はできませんが、彫刻以外のことでお客様のためにできることを「女将」としてやり尽くそう、その思いで腹を括った次第です。

施主様とそのご家族、関係者、地域の皆様のためにできる限りのことをしたいという強い思いが今まで以上に湧き上がっております。どうか今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

明日は成道会。全ての人の成道を願い、これからも弊所は造仏に臨みます。

合掌低頭。
南無釈迦牟尼仏