「光を伝える」イラストを担当しました

「今日は女将にお願いがありまして…」

2021年の初夏、城満寺(徳島県)の田村航也住職からお電話がありました。
穏やかなお声は、いつになく熱を帯びておいででした。

曹洞宗の根本宗典のひとつである「伝光録」を、イラスト付きで気軽に読み通せる形にしたい

その発願をたてたのだと、本の構想や具体的なイメージをお話しくださいました。「おぉ、面白そう!それはぜひ手に取りたい、読みたいですね」と前のめりで聞いていた私は、次の言葉で一転、および腰になります。

「そこで、お釈迦様と52名のお坊様のイラストをお願いしたいのです。」

そのお電話は、造像や御修理、はたまた編集やコラム執筆のご依頼ではなく、なんとイラストのご相談でした。SNSに投稿した子供と描いた絵が目に留まり、お声かけくださったとのこと。

絵を描くのは昔から好きで、過去には知人友人からパンフレットやチラシ等の簡単な挿絵の依頼を引き受けたことはありました。ですが、あくまで単純なものです。

その点、今回は歴代仏祖53人ものお姿をイラストにするというお役目。特別な絵の訓練をしたことがない者で良いのだろうかと、考えあぐねてお返事できないでおりました。

そんな私に航也住職はおっしゃいました。

「絵のうまさより、この発願に共感を憶えてくださっているかを何より大事にしたいんです。」

航也住職は資料としてさっそく書籍をお送りくださいました。


初めて手に取った「伝光録」は、当然わからない箇所が多々あり、情けなくも穴だらけの読み方です。それでも、祖師様方のご足跡を辿ることは大変に幸せな経験となりました。

「この方々がこうして光を伝えてくださったからこそ今私がこの本を手に取っているのだな」と、ありがたくでありがたくて、時には涙をこぼしながらページを繰り、イメージを膨らませたものです。

イラストにしていく過程では、航也住職の文を元に、ああでもない、こうでもないとやり取りしながら試行錯誤しました。

なかなか手が慣れず滞ることも多かった私に、ご住職は本当によくお付き合いくださいました。家族にも助けてもらいながらなんとか締切間際に納品まで漕ぎ着けました。

製作期間は2ヶ月くらいでしたでしょうか。時間の制約のある中ではありましたが、無事お届けできる形になったと伺った時に初めてホッとしました。

今年の花まつりの頃、この「光を伝える」は全国の曹洞宗寺院様に配布されたと伺っております。

私たちは、凡夫としてもがきながらも全ての活動が神仏を荘厳することになればと日頃より願い、暮らしております。造像や御修理とは異なるアプローチながら、イラストを描くことも荘厳に違いなく、たとえ拙くともその時を尽くしました。

全ての仏祖への敬愛の思いが増したこの経験は、何にも変え難い宝です。
大変貴重な機会を与えてくださいました城満寺 田村航也住職、ご寺族様、ご覧くださった皆様、誠にありがとうございました。

航也住職の文章がなんとも味わい深く、何度も噛み締めたい本です。機会がありましたら、ぜひ手に取ってご覧いただけましたら幸いです。

この記事がご縁で「光を伝える」にご興味を持たれた方には、ご希望冊数を弊所よりお贈りいたします。航也師の素晴らしい要約を、多くの皆様にぜひご堪能いただきたいと願います。

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南無釈迦牟尼仏
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吉田沙織 拜